中国を揺さぶる「新世代農民工」九千万人

執筆者:高村悟 2010年4月号
カテゴリ: 国際 金融
エリア: 中国・台湾

「中国患戸籍制度之苦久矣!(中国は戸籍制度に苦しめられている)」。中国の「経済観察報」など十三紙が一斉に三月一日付で一面に掲載した共同社説が中国を揺さぶっている。農民が都市の戸籍を自由に取得できない状況を差別と批判し、「戸籍制度を廃止すべき」と呼びかけたからだ。
 この共同社説はいくつかの点で深刻な意味を持っている、と中国のメディア関係者は指摘する。第一に十三もの新聞が参加した組織的な広がり、第二に社説の文章に革命スローガン的表現が多用されている点、第三に中国の国会にあたる年一回の全国人民代表大会(全人代)の開幕直前に掲載されたことだ。
 共同社説は数日後にはネット上から消され、掲載を主導した経済観察報の副編集長は更迭された。中国当局が激怒したのは容易に想像できるが、社説を読んだ一般市民は実はとりたてて異常さを感じず、戸籍制度改革がいよいよ動き始めると納得したという。伏線があったからだ。
 掲載二日前の二月二十七日、温家宝首相はインターネットサイトの「新華網」と「中国政府網」の共同主催のネットインタビューに参加、市民からの様々な質問に答えた。そのなかで「農民のために戸籍制度の改革が必要」と答えた。ネットをみた市民は、政府が都市戸籍を農民にも開放する可能性が出てきたと理解した。そうしたやりとりを受けて、三月一日の共同社説をみれば、政府が支持する意見と判断してもおかしくない。だが、実際は政府や党の逆鱗に触れ、強烈なしっぺ返しを受けた。一方で「少数の跳ね上がりが共産党などの目を盗んで掲載したものではなく、背後に大きな動きがある」との勘ぐりも根強い。

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