経済の頭で考えたこと (26)

ユーロは「脆弱性」を克服できるか

執筆者:田中直毅 2010年4月号
エリア: ヨーロッパ

 三月の第一週で、ギリシャ国債の第一段の借り換えはとりあえず成功を収めた。超緊縮財政の実施というギリシャ政府の発表に対して、市場は敬意を表して、次の展開を見守る姿勢をとったといえるだろう。しかしギリシャ政府は二〇一〇年から一一年にかけて、相次いで借り換え債の発行を迫られる。政府は自らのガバナンスの欠陥を封じ込めることができるのかが問われる。そしてこうした脆弱性を抱えた国家をメンバーとした共通通貨ユーロが売られ続けることはほぼ確実な情勢だ。
 それは市場においてガバナンスの有効性のスキをつくことを職業上の任務とした専門家が狙いを定めているからだ。加盟国の一員に対して、ガバナンスの強制ができるのかが具体的に問われる中で、いわばEU(欧州連合)の盟主の立場にあるはずのドイツとても責任を負えるわけではないと自らをみなしているのだ。そこで登場したのが加盟国向けの欧州版IMF(国際通貨基金)構想である。これで時間稼ぎをしながら、主権国家ギリシャの財政規律の回復を待とうというのだ。

カテゴリ: 経済・ビジネス
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執筆者プロフィール
田中直毅(たなかなおき) 国際公共政策研究センター理事長。1945年生れ。国民経済研究協会主任研究員を経て、84年より本格的に評論活動を始める。専門は国際政治・経済。2007年4月から現職。政府審議会委員を多数歴任。著書に『最後の十年 日本経済の構想』(日本経済新聞社)、『マネーが止まった』(講談社)などがある。
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