徘徊する毛沢東の亡霊 民主化への道は遠い

執筆者:鈴木孝昌 2010年4月号
カテゴリ: 国際 金融
エリア: 中国・台湾

 香港返還が行なわれ、中国が愛国主義に沸いた一九九七年。北京の急進的作家三人が書いた「二〇三〇 中国第一」が注目を集めた。米国がテロや財政赤字により凋落し、日本では反米感情が高まり日米同盟が崩壊。中国が有人宇宙飛行や五輪開催に成功し、世界ナンバーワンになる――。ちょうど今から二十年後を予言した書は、恐ろしいほどに的中しつつある。金融界では、まさに「二〇三〇年ごろ」に、中国の国内総生産(GDP)が米国を抜いて世界一になるとの予測も出ている。 昨年十月一日、中華人民共和国は建国六十周年を迎えた。学生や市民十八万人を動員して行なわれた祝賀パレードの先頭で登場したのは「毛沢東思想万歳」のスローガンだった。胡錦濤国家主席の母校、清華大学の学生らがその七文字を高々と掲げ、横一列の隊列で行進した。この言葉が大群衆の前で掲げられたのは、文化大革命以来のことだろう。中国メディアによると、それまでの予行演習では「奮闘創業」だったスローガンが、本番二日前になって突然、書き換えられたのだという。 中国全土で今、毛沢東の亡霊が徘徊している。貧富の格差や腐敗の拡大により、皆が平等で清廉だった毛沢東時代への回帰を訴える世論が高まる。不況で民間企業が倒産し、国営企業が復権する「国進民退」現象も起きている。

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