“古い自民党化”が進む民主党マニフェスト

原英史
執筆者:原英史 2010年6月23日
カテゴリ: 政治
エリア: 日本

 国政選挙が近づくと、多くの新聞は、2大政党たる民主党と自民党の公約(マニフェスト)の比較表を掲載して、争点を浮き彫りにするのが恒例だ。しかし、今度ばかりは、新聞各社も困り果てたのではなかろうか。というのも、両党の公約にほとんど差異がないからだ。
 原因は双方の歩み寄りだ。自民党は、政権党時代には言えなかった大胆なことを言いだし、民主党は、野党時代に唱えていた尖がった主張を引っ込めた。結果として、同じ地点に辿り着いたわけだ。だが、どちらの振れ幅がより大きかったかといえば、明らかに民主党だ。結論からいうと、今起きていることは、「民主党の“古い自民党化”」、かつて民主党が批判していた「政策は官僚任せの、古臭い政治への回帰」と言ってよい。

消去された「ムダづかい根絶」

 民主党のマニフェスト(「今年版」)を読み解くには、昨年のマニフェスト(「昨年版」)と見比べるのが早道だ。すると、「昨年版」の冒頭3ページ分がすっぽり抜け落ちていることが分かる。そこに、大事な内容が2つあったのだ。
 書いていない1点目は、“収支計画書”にあたる部分だ。「昨年版」では、2ページと3ページを丸々割いて、「子ども手当などの新たな政策のために16.8兆円」が必要で、それを「ムダづかい根絶9.1兆円、埋蔵金活用など7.7兆円」で捻出する(平成25年度の場合)、という詳細な表が掲載されていた。だが、政権交代後に実際は、事業仕分けでムダをかき集めてもせいぜい7000億円弱にとどまったことは周知のとおり。そこで、“収支計画書”をどう修正するのかと注目していたら、何と全て消去して、“金額抜きの事業計画書”に書き替えてしまったのだ。
 報道によれば、「今年版」の発表後、仙谷由人官房長官は「残りせいぜい(ムダを)2兆円切れればいいところ」と発言したそうだから、要するに、昨年の計画があまりに大ボラだったので恥ずかしくて消してしまった、ということかもしれない。
 それでは、「新たな政策」はどうするのかというと、「今年版」では、「既存予算の削減または収入増によって捻出」とだけ書いてある。「既存予算の削減」が2兆円しかないのだから、結局、「収入増」(増税)をやるまでは、ほとんど新しい政策はやらないというに等しい。だから、「昨年版」の目玉政策だった「子ども手当」も「高速道路無料化」も一気にトーンダウンし、いつどれだけやるのか全く不明な書きぶりになったのだ。

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執筆者プロフィール
原英史
原英史 1966年東京都生れ。東京大学法学部卒、米シカゴ大学院修了。89年通商産業省(現・経済産業省)入省。大臣官房企画官、中小企業庁制度審議室長などを経て、2007年から安倍・福田内閣で行政改革・規制改革担当大臣の補佐官を務める。09年7月退職。株式会社政策工房を設立し、政策コンサルティング業を営む。大阪府・市特別顧問、国家戦略特区ワーキンググループ委員(内閣府)、社会保障審議会年金事業管理部会委員(厚生労働省)を務めるほか、NPO法人万年野党理事、「地方議会を変える国民会議」発起人など。著書に『官僚のレトリック』(2010年、新潮社)、『「規制」を変えれば電気も足りる』(2011年、小学館101新書)、『日本人を縛りつける役人の掟/岩盤規制を打ち破れ』(2014年、小学館)、『国家と官僚』(2015年、祥伝社新書)。
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