インドの「お約束事」

執筆者:山田剛 2010年9月1日
カテゴリ: 国際 金融

 中国とともに世界同時不況の影響からいち早く脱却したインドに、再び各国政府・企業の注目が集まっています。

 工業生産や輸出、自動車や携帯電話の販売は直近の経済ブームだった2005-07年の水準をもしのぐ勢いです。今なお底知れぬ潜在力を抱えた巨大成長市場であり、また生産やR&D(研究・開発)の拠点としても有望視されるインドでは、各国の有力企業が競って投資を行い、新規事業を立ち上げる一方、インド企業もまた豊富なキャッシュを背景に海外M&A(企業買収)や欧米・アジアなど新市場への進出を加速させています。

こうしたなか、日本企業もこれまで暖めてきたビジネス案件を続々と実行に移し、一段とインドビジネスに本腰を入れ始めました。自動車・部品が中心だった進出企業は鉄鋼、家電、消費財、金融・サービス、物流などに業種が拡大。進出地域もデリー首都圏だけではなく西部の商都ムンバイや工業都市プネー、南部チェンナイ周辺へと広がるなど、急速に本格化しています。

 これと同時に、インドの国際社会における存在感も急速に高まってきました。近年のASEAN(東南アジア諸国連合)+6やG20(20カ国・地域首脳会合)では、新興国の代表として中国とともに大きなポジションを占めるに至りました。日本でも論争を起こした「原子力協力協定」を巡る諸問題は、「大国」インドの存在が、旧来の核軍縮の枠組みに収まりきれなくなったことを如実に示しています。

その一方で、日本でのインド報道には、ビジネス界が求めるミクロ情報がやや不足気味であり、政治情勢が経済政策を左右するという視点も十分ではありません。政治とほぼ関係なく経済が成長する先進国と違って、世界最大の民主主義国インドの経済政策を読み解くには、複雑な政治情勢、それもカーストや地域主義、ポピュリズムに彩られた数々の「お約束事」を理解しなければなりません。

「インドの部屋」では、日々の政治・経済ニュースを俎上に載せ、その意味するところや背景事情、今後の展開などを分かりやすく解説・論評していきたいと考えています。インフレ抑制や産業振興、全方位の外交政策から農村・貧困対策まで、数々の難問を抱えるインド情勢の分析は決して一筋縄では行きません。読者の皆さんのご意見やご質問を踏まえ、ともに勉強していければ幸いです。

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執筆者プロフィール
山田剛 日本経済研究センター主任研究員。1963年生れ。日本経済新聞社入社後、国際部、商品部などを経て、97年にバーレーン支局長兼テヘラン支局長、2004年にニューデリー支局長。08年から現職。中東・イスラム世界やインド・南アジアの経済・政治を専門とする。著書に『知識ゼロからのインド経済入門』(幻冬舎)などがある。
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