政権交代後も続いていた「官僚の無謬性」原則

執筆者:原英史 2010年9月9日
タグ: 日銀
エリア: アジア

代表選の最中でほとんど注目されていないが、今週、国会では、衆参の主要委員会で「閉会中審査」が行われている。円高・株安問題、朝鮮学校の無償化問題など、国会閉会中に次々と問題が巻き起こる中、さすがに審議しないとまずいだろうというわけだ。

その中で、先の参院選で初当選した新人議員たちの“初登板”も数件。
タリーズコーヒー創業者の松田公太氏(みんなの党)もその一人。9日の参院経済産業委員会で質問していたが、なかなか面白かった。
 
質問内容は2つあって、1つは、日銀の政策決定会合のリーク問題。こちらは日経新聞ウェブ版でも報じられていた。
 
もう1つは、政府のPDCA、というテーマ。
質問は、「民間企業では、例えば新規事業を始めてうまくいかなければ、原因究明、早期撤退、場合によっては責任者に責任とらせる。経産省では、過去2年間で、失敗と認めてやめた事業がどれだけあるのか? 原因をどう分析し、責任者にどう対処したのか?」という、いかにも経営者感覚のものだった。
 
直嶋経産大臣は最初、「事業仕分けをやっている」などと“すれ違い答弁”でかわそうとしたが、再度突っ込まれ、結局、「自分が大臣になってから、失敗と認めてやめ、責任をとらせたケースはない」と認めていた。
 
これは、結構、本質的な大問題だ。
昔から、霞が関では、「官僚の無謬性」原則というのがある。「官僚は失敗しない」ことになっていて、絶対に失敗したと認めない。
この「無謬性」原則が政権交代後もそのまま生きていた、と閣僚が認めてしまったわけだ。
 
これでは、政権交代後、政策の大転換がなされなかったのも無理はない。
 

(原 英史)

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
原英史(はらえいじ) 1966(昭和41)年生まれ。東京大学卒・シカゴ大学大学院修了。経済産業省などを経て2009年「株式会社政策工房」設立。政府の規制改革推進会議委員、国家戦略特区ワーキンググループ座長代理、大阪府・市特別顧問などを務める。著書に『岩盤規制―誰が成長を阻むのか―』、『国家の怠慢』(新潮新書)など。
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