やはり一筋縄ではいかぬインド~原子力損害賠償法、原発メーカーの不安要因に

執筆者:山田剛 2010年9月21日

 千数百億ドル規模とされるインドの原発市場――。いち早くインドとの民生用原子力協力協定を成立させた米国は先陣を切ってその市場を開拓していくはずだった。だが、米国および米産業界の大いなる期待は、インド国会が8月末に可決させた「原子力損害賠償法」によっていささか雲行きが怪しくなってきた。

 この「原子力損害賠償法」は、放射能漏れなどの原発事故が発生した際、通常は原発の操業会社のみに負わせていた賠償責任を、原子炉などのメーカーつまり供給企業にも負わせるとしたものだ。これにより、万一の際の保障体制がより強力な形で整うことになる。だが、国営原子炉メーカーが存在し、いざという場合には政府のバックアップが期待できるロシアやフランスなどに比べ、米国企業は相対的に不利益を受ける可能性が出てくる。もちろん、米ゼネラル・エレクトリック(GE)と組む日立、米ウエスチングハウス(WH)を傘下に持つ東芝など、原子力技術で世界最先端を走る日本企業にとっても他人事ではない。

 インド政府は国会審議の過程で、原子炉供給企業の責任を軽減する修正案を閣議了承するなど、米企業などへの配慮を示したが、結局これは野党の激しい批判で撤回に追い込まれた。この結果、原子炉メーカーなどには厳しい内容となった「原子力損害賠償法」について、米国のローマー駐印大使やクローリー国務次官補らが懸念を表明。これがまた野党の反発をあおるという悪循環に陥っている。

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執筆者プロフィール
山田剛 日本経済研究センター主任研究員。1963年生れ。日本経済新聞社入社後、国際部、商品部などを経て、97年にバーレーン支局長兼テヘラン支局長、2004年にニューデリー支局長。08年から現職。中東・イスラム世界やインド・南アジアの経済・政治を専門とする。著書に『知識ゼロからのインド経済入門』(幻冬舎)などがある。
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