「大臣・副大臣の給与10%返納」・・・人件費2割カットの本気度が問われる

原英史
執筆者:原英史 2010年9月22日
カテゴリ: 政治
エリア: 日本

 

「菅改造内閣発足に伴い、大臣・副大臣の給与10%返納を決定」、という話が新聞各紙で報じられている。
 
各紙とも口を揃えて「鳩山内閣、改造前内閣から継続して」と報じているのだが、これは、ちょっとおかしい。
正確に言うと、「自民党政権時代から継続して」だ。
民主党政権で始めたことではない。
 
そして、「大臣と副大臣」は返納するというが、「政務官」には言及がない。
実は、自民党政権時代から、「大臣と副大臣」だけで、「政務官」は返納してこなかった。おそらく今回も、それを踏襲するのだろう。
 
従来、「返納は大臣・副大臣だけ」に限定してきたのには理由がある。大臣らの給与に関する仕組みだ。
大臣らの給与は、「特別職の職員の給与に関する法律」で定められる。
俸給月額では、総理大臣:206.5万円、大臣:150.7万円、副大臣:144.4万円、政務官:123.1万円、といった具合だ。
 
だが、総理や大臣らは(片山総務大臣を除くと)、「行政府」で仕事をしているだけでなく、「立法府」で国会議員もやっている。
では、給与上は、立法府から国会議員歳費、行政府から上記金額と、両方丸々もらうのかというと、そうではない。
「国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律」7条で、行政府からは、国会議員歳費を上回る差額分しかもらわない、と定めているのだ。
 
大臣や副大臣の場合は、給与10%カットしても、なお国会議員歳費を相当程度上回るが、政務官の場合は、もともと国会議員歳費と大して差がない(今年4月21日の内閣委員会・総務委員会連合審査会における西村康稔議員質問によれば、年収ベースで、政務官は2378万円、国会議員は2139万円)。
そこで、「政務官の場合、10%カットすると、国会議員歳費とほぼ同額になって、差額はほとんど無し、つまり、行政府での仕事がタダ働きに近くなってしまう」というのが、従来、政務官は返納してこなかった理屈だったわけだ。
 
しかし、考えてみるに、こういったことを、「自民党政権からそのまま継続・踏襲」という対応でよかったのだろうか?
 
民主党は、マニフェスト2009で「国家公務員人件費2割削減」を約束したはずだ。
今回の代表選での菅総理の公約でも、「国家公務員人件費の2割削減に向け、人事院勧告を超えた削減を目指す」と改めて明記している。
 
「官僚の人件費をトータルで2割削減する」と宣言しておきながら、「大臣らの給与は1割しかカットしない」、「政務官はカットすらしない」というのは、いかにもまずくないか。
自分たちが率先して身を切ってこそ、官僚の人件費にも切りこめる(官僚たちにも納得感が生まれる)のではないか。
 
これでは、「人件費2割削減」の本気度が疑われてしまう。
 
(原 英史)
 
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執筆者プロフィール
原英史
原英史 1966年東京都生れ。東京大学法学部卒、米シカゴ大学院修了。89年通商産業省(現・経済産業省)入省。大臣官房企画官、中小企業庁制度審議室長などを経て、2007年から安倍・福田内閣で行政改革・規制改革担当大臣の補佐官を務める。09年7月退職。株式会社政策工房を設立し、政策コンサルティング業を営む。大阪府・市特別顧問、国家戦略特区ワーキンググループ委員(内閣府)、社会保障審議会年金事業管理部会委員(厚生労働省)を務めるほか、NPO法人万年野党理事、「地方議会を変える国民会議」発起人など。著書に『官僚のレトリック』(2010年、新潮社)、『「規制」を変えれば電気も足りる』(2011年、小学館101新書)、『日本人を縛りつける役人の掟/岩盤規制を打ち破れ』(2014年、小学館)、『国家と官僚』(2015年、祥伝社新書)。
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