北朝鮮論調がトーンダウン

執筆者:平井久志
執筆者:
2010年9月25日
タグ: 北朝鮮
エリア: アジア

 

強盛三郎さんから小生の原稿へのコメントが寄せられました。
 
党代表者会まで残すところ数日ですが、「見通す」ということのためには日頃の勉強が重要だと痛感している昨今です。
同会は1日で終わる可能性が高いと思いつつ、経済路線で新しい動きが出てほしいという私の「期待」もあり、注視しています。(平井久志)
 
 
平井氏の「北朝鮮「党代表者会」を前に見えてきたこと」を読んだ。党規約の改正可能性や「道(政治局)」表現への疑問については同様の問題意識をもって見守っている。そもそも党代表者会の目的が「党最高指導機関の選挙」とされていること自体、異例なことである。党規約によれば、代表者会では中央委員が選出されるため、従来は「党中央指導機関の選挙」と表現されてきた。機関の名称改編は、幹部の大量昇進とともに金正日総書記が御得意とするところだ。
 
私は「労働新聞」など北朝鮮公式メディアの論調から、ジョンウン氏が常務委員程度の非常に高い職位に就くものと考えてきた。しかし、ここにきて下方修正しはじめた。論調がトーンダウンしてしまったからだ。7月下旬から9月初めにかけては後継者の登壇を強く臭わせるような、「継承」、「白頭の血統を代を継いで輝かしていく」、「継続革命の血筋」といった表現のほか、「金日成同志の子孫、金正日同志の子孫」、「わが将軍様の胆力と気概がそのまま受け継がれたりりしいそのパルコルムの音」といった記述まで見られた。しかし、このような特徴的な表現は、9月11日の「党の統一団結も継承されなくては固守することも発展することもできない」、「団結の継承問題こそ領導の継承問題である」を最後に全く見られなくなってしまった。
 
それでも、正統性確保の見地から、ジョンウン氏が中央委員に「選出」されるこの機を逃すとまでは考えられない。やはり最低でも「選挙」で中央委員になり、それが公表されることに意味がある。(強盛三郎)
 
カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
平井久志(ひらいひさし) ジャーナリスト。1952年香川県生れ。75年早稲田大学法学部卒業、共同通信社に入社。外信部、ソウル支局長、北京特派員、編集委員兼論説委員などを経て2012年3月に定年退社。現在、共同通信客員論説委員。2002年、瀋陽事件報道で新聞協会賞受賞。同年、瀋陽事件や北朝鮮経済改革などの朝鮮問題報道でボーン・上田賞受賞。 著書に『ソウル打令―反日と嫌韓の谷間で―』『日韓子育て戦争―「虹」と「星」が架ける橋―』(共に徳間書店)、『コリア打令―あまりにダイナミックな韓国人の現住所―』(ビジネス社)、『なぜ北朝鮮は孤立するのか 金正日 破局へ向かう「先軍体制」』(新潮選書)『北朝鮮の指導体制と後継 金正日から金正恩へ』(岩波現代文庫)など。
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