尖閣諸島事件をみて、再び援助政策について考える

執筆者:平野克己 2010年9月26日
エリア: アフリカ

 1987年のことだったと思う。フランスの援助政策を調べにパリに出かけた。日本政府代表部でOECD開発援助委員会(DAC)を担当している公使に会い、カフェで昼食をご一緒した。
「DACで途上国といえばアフリカのことをさす。そのなかで日本はただひとり、アジアにもまだ開発支援が必要だと言い続けている。アフリカに対して日本が援助しているのは、こういった国際援助に関する発言権を確保するための、いわば会費のようなものなんだ」
と話してくれた。1983年大旱魃のあとのアフリカ救済キャンペーンが世界中を席巻した直後のことで、とても印象に残っている。悪い意味ではない。30歳そこそこの若造に外交現場の一端を吐露してくれたと感じたし、「アフリカを救え」キャンペーンと援助政策は、協調は望ましいとしても、別物として考えなくてはならないと思っていたからだ。

カテゴリ: 社会 政治
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執筆者プロフィール
平野克己(ひらのかつみ) 1956年生れ。早稲田大学政治経済学部卒、同大学院経済研究科修了。スーダンで地域研究を開始し、外務省専門調査員(在ジンバブエ大使館)、笹川平和財団プログラムオフィサーを経てアジア経済研究所に入所。在ヨハネスブルク海外調査員(ウィットウォータースランド大学客員研究員)、JETRO(日本貿易振興機構)ヨハネスブルクセンター所長、地域研究センター長などを経て、2015年から理事。『経済大陸アフリカ:資源、食糧問題から開発政策まで』 (中公新書)のほか、『アフリカ問題――開発と援助の世界史』(日本評論社)、『南アフリカの衝撃』(日本経済新聞出版社)など著書多数。2011年、同志社大学より博士号(グローバル社会研究)。
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