尖閣問題で日本政府の意思決定に疑問あり

野嶋剛
執筆者:野嶋剛 2010年9月28日

この一週間ほど中国に滞在していましたが、船長の勾留延長が決まり、中国の日本への「報復」がすごい勢いで始まって、船長が釈放されました。船長はVサインを送還の機上で掲げ、一種の英雄として連日中国メディアに登場していました。

中国の過剰な強硬姿勢を批判するのはたやすいのですが、日本人として私が指摘しておきたいのは、今回、我が日本政府の意思決定に大きな問題があったということです。

「政治的判断」を求めた中国に対し、「国内法で粛々」という表現が今回、日本の政治家の口から様々な場所で語られました。ただし途中まで。船長の釈放は紛れもない「政治的判断」です。つまり「粛々」は途中でポキッと折れたわけです。

中国は、ケンカの相手としては、やっかいで、怖い相手です。その中国とケンカをするにはそれなりの覚悟と準備が必要で、政府内の意思統一も、落としどころの想定も、ちゃんと固めておくべきでしたが、それがほとんどなかったことが、その後の各メディアの検証報道で明らかになりつつあります。

もともと尖閣問題では過去の例にもありますように、ナショナリズムを盛り上げてしまう「人間」を捕まえることは避ける、という処方箋を日本は持っていました。今回、事例が悪質だったので、それを曲げて逮捕に踏み切った。そこまではいいでしょう。

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執筆者プロフィール
野嶋剛
野嶋剛 1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に「イラク戦争従軍記」(朝日新聞社)、「ふたつの故宮博物院」(新潮選書)、「謎の名画・清明上河図」(勉誠出版)、「銀輪の巨人ジャイアント」(東洋経済新報社)、「ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち」(講談社)、「認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾」(明石書店)、訳書に「チャイニーズ・ライフ」(明石書店)。
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