グローバル・ビジネスの新地政学
グローバル・ビジネスの新地政学(1)

アジアでカジノが急増する背景

 アジアでカジノが急増している。今年はシンガポールで2月にセントーサ島、4月にマリーナ・ベイに大型カジノが相次ぎオープンした。シンガポールの成長率は今年、1967年の統計開始以来最高の13%前後に達するとみられるが、好調の背景のひとつがカジノ効果による訪問客の増加といわれる。

ラスベガスを抜いた「カジノ国家」の誕生

シンガポールにマリーナ・ベイにオープンした巨大カジノ (c)AFP=時事
シンガポールにマリーナ・ベイにオープンした巨大カジノ (c)AFP=時事

 今、アジア域内を見渡した時、カジノが成長率に影響を与える大きな要因になっている。その最もよい例が、言うまでもなくマカオだ。マカオのカジノはかつて実業家のスタンレー・ホー氏が牛耳っていたが、2002年に国際入札で米ラスベガス系のカジノ企業、ウィン・リゾーツや香港系のギャラクシーなどが進出、ラスベガスのサンズも追って進出し、一気に厚みが増した。06年にはカジノの売り上げ高がラスベガスを抜き、世界最大の“カジノ国家”になった。03年には年間1000万人足らずだった観光客は07年には2500万人を突破、カジノ不況といわれた昨年も2000万人以上の水準を維持している。マカオの国内総生産(GDP)は03年の82億6400万ドルから08年には223億4300万ドルに5年で2.7倍に拡大した。GDPの半分がカジノの売り上げだからだ。  世界でカジノを合法化している国は120カ国以上に及ぶといわれる。アジアでは4カ国を除けばすべての国にカジノがある。日本と中国(本土)、インド、タイだ。奇しくもアジアの経済大国が並んだ形だが、日中印がカジノを禁止していることで、周辺国が潤う循環も生まれている。  マカオは当然、本土からの中国人客が70%以上を占めており、とりわけ「ハイローラー」と呼ばれるVIPは大半が中国人。だが、中国人客狙いのカジノがあるのはマカオだけではない。北朝鮮北部の経済特区の「羅先・先鋒(ラジン・ソンボン)」地区。ここに2000年頃オープンした香港系のエンペラーホテルにカジノが開設されている。外国人のみが入れ、賭け金は米ドルか人民元。客のほぼすべてが中国人で、ディーラーもマカオからの出稼ぎ者。北朝鮮にとって貴重な外貨獲得源になっている。  韓国にもソウル、釜山や済州島などに多数のカジノがあるが、日本人の週末ギャンブラーにおなじみのソウルのウォーカーヒルは中国人で賑わっている。今は人民元は当たり前のように世界で両替できるが、90年代末に中国以外で人民元の両替が最初にできるようになったのがウォーカーヒルと言われるほど中国人客が多い。

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