アフリカに生まれなくてよかった?

白戸圭一
執筆者:白戸圭一 2010年10月6日
カテゴリ: 社会 文化・歴史 国際
エリア: アフリカ

 「アフリカの子供のいじめ事情について取材し、原稿を出すように」
 特派員として南アフリカに駐在していた4年前、東京本社からそんな指示を受けたことがあります。世界各地の「いじめ事情」を取材してまとめる記事を作りたいとのこと。
 日本で子供が自殺するほどいじめが深刻な問題であることは周知の通りです。筆者も国内勤務のころには何度か中学生の「いじめ自殺」を取材したことがあります。後で世界の他の地域の特派員が書いた記事を読んで知ったことですが、アメリカ、韓国などの学校でもやはり深刻な問題とのことでした。

 では、アフリカ諸国ではどうなのか。結論から言うと、人間が一定の集団を形成している以上、世界のどこであれ「いじめ」は存在しているでしょうが、アフリカでは、それが被害者を自殺に追い込むほど深刻なものとは思えないというのが率直な感想でした。アフリカのいくつかの国の新聞記事を検索してみましたが、いじめを深刻な問題として報じた新聞記事は見つかりません。確かに、貧困、紛争、エイズ感染の拡大などが問題となっている大陸で、学校でのいじめが深刻になっているとはちょっと考えにくい。

 筆者の子供2人は幼稚園から高校まで一貫教育のヨハネスブルクの私立校に通っていましたが、いじめが深刻という話は聞いたことがありません。都市部の旧黒人居住区の公立校で、しばしば対教師暴力や生徒間の抗争が発生していましたが、これらは長年のアパルトヘイト(人種隔離)政策によって形成された貧困、貧富の差、黒人家庭の崩壊、いわゆる「暴力文化」などに起因する問題と捉えるべきであり、アフリカ全体の傾向を代表している現象とは言い難いと思います

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執筆者プロフィール
白戸圭一
白戸圭一 三井物産戦略研究所国際情報部 中東・アフリカ室主席研究員。京都大学大学院客員准教授。1970年埼玉県生れ。95年立命館大学大学院国際関係研究科修士課程修了。同年毎日新聞社入社。鹿児島支局、福岡総局、外信部を経て、2004年から08年までヨハネスブルク特派員。ワシントン特派員を最後に2014年3月末で退社。著書に『ルポ 資源大陸アフリカ』(東洋経済新報社、日本ジャーナリスト会議賞)、共著に『新生南アフリカと日本』『南アフリカと民主化』(ともに勁草書房)など。
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