経済の頭で考えたこと
経済の頭で考えたこと(28)

ロシアに「近代化」は可能か

田中直毅
執筆者:田中直毅 2010年10月6日
カテゴリ: 国際
エリア: ロシア
「双頭体制」に変化は?(C)AFP=時事
「双頭体制」に変化は?(C)AFP=時事

 9月末に訪露した際、驚いたのは、意外にもメドヴェージェフ大統領が権力維持の意図を明らかにした、との評価が広がっていたことだ。突然のように「北方領土」の訪問意図を表明したのも、ロシア国民に対する訴えかけの意味がある、とされる。2012年のロシア大統領選挙には、プーチン首相かメドヴェージェフ大統領かが出馬し、その後6年間(4年の任期が次回より延長)の執務体制をとることになろう。現時点ではどちらとも決しがたい、というのがモスクワの有識者たちの見解だった。  メドヴェージェフが大統領になって以来、治安を担う諸機関はプーチン首相のもとに再編され、メドヴェージェフは大統領の役割として、ロシアの諸課題をシンクタンクに諮問しつつ、将来にかけての進路と戦略とを先取りして提示することを打ち出した。  21世紀は「知識」がカギとなる、という規定をあえて提示したのである。ロシア社会は石油や天然ガスを中心とする鉱産物の国際価格に振り回されるのみで、付加価値創造の軸を依然として構築できていない。メドヴェージェフが提示した規定は、この厳しい現実からの脱却の見通しが立たないため、未来に対する 知的解明こそを現実転換のテコにしたいという意思表明だった。結果として、ロシアではシンクタンク・ルネッサンスが幕を明けた。  メドヴェージェフがロシアの近代化というテーマを掲げたのは、彼の法意識が背景にあったからだろう。オバマ大統領との初回の面談で、お互いが「ローマ 法」の学習教科書を提示し合って、双方の共通の知識基盤の確認から出発したというエピソードが象徴的だ。2人とも法律家として社会に出るという体験を持つことが、こうした会話へと結びついた。重要なのは、ロシア社会の枠組みのひとつは、ローマ帝国→東ローマ帝国→ビザンチンからモスクワへの移転という系譜を逆に辿れば、西欧社会に行きつくという点である。

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執筆者プロフィール
田中直毅
田中直毅 国際公共政策研究センター理事長。1945年生れ。国民経済研究協会主任研究員を経て、84年より本格的に評論活動を始める。専門は国際政治・経済。2007年4月から現職。政府審議会委員を多数歴任。著書に『最後の十年 日本経済の構想』(日本経済新聞社)、『マネーが止まった』(講談社)などがある。
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