曲がり角に立つ急進左派政権(2)(ベネズエラ)

遅野井茂雄
執筆者:遅野井茂雄 2010年10月8日
カテゴリ: 国際 政治 金融
エリア: 中南米

 9月26日投票が行われたベネズエラの国会議員選挙で、チャベス政権の与党統一社会党は絶対多数の3分の2を死守できなかった。一院制の議会165議席のうち98議席と過半数を制したものの、目標の110議席に届かず、野党連合「民主統一会議」に65議席を許す結果となった。チャベス政権にとっては大きな打撃だ。

 野党の健闘を導いた最大の要因は、前回選挙をボイコットし翼賛議会を成立させ政権の独走を許した苦い経験を踏まえ、野党勢力が一本化に成功したことだ。与党に有利な選挙区割りや政府の総力を挙げた資源動員、政権側からの様々な規制や脅迫の中で、野党連合は得票率では過半数を得る健闘ぶりを示し、政権への批判票の動員に成功した。

 今回の選挙結果は、なによりも深刻な物不足、通貨切り下げ、30%に達するインフレと金融危機後悪化する経済状況、また法治国家が崩れる中での銃器の氾濫やマフィアの流入で年間2万人を超す殺人件数に象徴される治安の悪化など、11年続いた「ボリバル革命」の実績に対する不満の現れである。

 新年から新議会が発足するが、政府はこれまでのように重要法案を意のままに通過させ、「21世紀の社会主義」に向けた改革を強引に進めることは困難となろう。もっとも年内に現国会を通じて体制固めを強化することが考えられ、また社会主義体制の基盤として設立されている「地域コミューン」の代表者会議に国会の権限を委譲するといった策も取り沙汰されているが、選挙後そう露骨なことはできない環境が内外に生まれるだろう。

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執筆者プロフィール
遅野井茂雄
遅野井茂雄 筑波大学大学院教授、人文社会系長。1952年松本市生れ。東京外国語大学卒。筑波大学大学院修士課程修了後、アジア経済研究所入所。ペルー問題研究所客員研究員、在ペルー日本国大使館1等書記官、アジア経済研究所主任調査研究員、南山大学教授を経て、2003年より現職。専門はラテンアメリカ政治・国際関係。主著に『21世紀ラテンアメリカの左派政権:虚像と実像』(編著)。
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