臨時国会の論戦始まる:「官僚の作文を読むこと」の禁止を

原英史
執筆者:原英史 2010年10月8日
カテゴリ: 政治
エリア: 日本

 

臨時国会での論戦が始まった。
 
早速、論戦はヒートアップ。6日の所信質疑では、稲田朋美議員(自民党)が「官僚の用意した原稿を読まず、首相自身の政治家としての言葉で答えてほしい」と挑発したのに対し、菅総理が「『原稿を読まないで答弁しろ』というなら、原稿を読まないで質問するのが筋だ」と反論。翌日、「品位のない答弁だった」と古川元久官房副長官が陳謝する羽目になった。
 
品位云々はともかく、稲田氏の趣旨は「官僚の作文を読まずに、自分の言葉で」ということだから、菅総理の反論は話が噛み合っていない。
 
「官僚の作文」という意味で、私が特に気になったのは、「小沢氏の説明責任」について、菅総理が繰り返し「国会でご議論・ご決定いただきたい」と答弁したことだ。
 
実は、菅総理のかつての著書「大臣」には、こういう記述がある(179ページ)。
「与党の代議士に金銭的な問題が持ち上がり、野党が証人喚問を要求して審議ストップしたりすると、総理大臣は『国会のことは国会に聞いてくれ』と言う。これは、官僚が言うならば正しいが、総理大臣は、国会議員であり、与党党首でもある。自分の党の議員が疑惑を持たれている以上、党首として何らかの措置をとるべきだろう」(一部省略・要約して引用)
 
今国会での菅総理の答弁は、まさに、かつて自らが「官僚の答弁」と批判していたセリフそのもので、自らが「国会議員」「与党党首」であることは忘れたかのようだ。
菅氏自身のかつての主張に照らせば、これは、「官僚の作文を読んでいる」と言われても仕方ないだろう。
 
ちなみに、民主党政権では、「国会改革」として、「官僚の国会答弁禁止」を進める動きがあった。
私が思うに、「官僚の国会答弁禁止」をやっても、代わりに「政治家が官僚の作文を読む」のだったら、何の意味もない。
むしろ、作文を書いた官僚自身が国会に出てきて、自ら答弁した方が、よほど責任がはっきりして健全だ。
 
「官僚の国会答弁禁止」は、主導していた小沢前幹事長が“一兵卒”になったことを機にこの際ご破算にし、代わりに「官僚の作文を読むことの禁止」を進めたらよいと思う。
 
なかなか法的に禁止というわけにはいかないだろう(例えば、官僚に用意させた資料を手元において、自分の言葉で答弁するといったケースは認めてよいだろうから、「構成要件」を定めて法的に禁止するのはちょっと難しい)が、少なくとも、「官僚の作文をただ読み上げるのは、国会議員として恥」ということをもっと徹底させたらよい。
 
(原 英史)

twitter.com/HaraEiji

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執筆者プロフィール
原英史
原英史 1966年東京都生れ。東京大学法学部卒、米シカゴ大学院修了。89年通商産業省(現・経済産業省)入省。大臣官房企画官、中小企業庁制度審議室長などを経て、2007年から安倍・福田内閣で行政改革・規制改革担当大臣の補佐官を務める。09年7月退職。株式会社政策工房を設立し、政策コンサルティング業を営む。大阪府・市特別顧問、国家戦略特区ワーキンググループ委員(内閣府)、社会保障審議会年金事業管理部会委員(厚生労働省)を務めるほか、NPO法人万年野党理事、「地方議会を変える国民会議」発起人など。著書に『官僚のレトリック』(2010年、新潮社)、『「規制」を変えれば電気も足りる』(2011年、小学館101新書)、『日本人を縛りつける役人の掟/岩盤規制を打ち破れ』(2014年、小学館)、『国家と官僚』(2015年、祥伝社新書)。
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