撤退は当然「アザデガン開発」の裏側

執筆者:新田賢吾 2010年10月19日
エリア: 中東 日本
イラン包括制裁法案に署名するオバマ米大統領 (c)AFP=時事
イラン包括制裁法案に署名するオバマ米大統領 (c)AFP=時事

 日本の石油開発最大手の国際石油開発帝石(INPEX)が、イランで取り組んでいたアザデガン油田からの撤退を決めた。国際社会が疑念を抱いているイランの核兵器開発を阻止するため、米国が強化する対イラン制裁によって撤退を余儀なくされた。  アザデガン油田は世界の未開発油田としては最大級の260億バレルの埋蔵量を持つといわれる。INPEXは2004年に開発権益の75%をイラン政府から取得した。しかし、当時からすでにイランは核開発疑惑を持たれており、米国はINPEXと経済産業省に対し、アザデガン開発から手を引くよう圧力をかけていた。米の要求に従って、同社は06年に権益比率を一気に10%まで引き下げ、開発のメインプレイヤーの座を降りた。今回はさらに完全な撤退となる。

変わらぬ米国の強硬姿勢

 日本では今回の撤退を衝撃的に受け止める人もいるが、決して意外な顚末ではない。むしろなるべくしてなったといってよい。米国の対イラン強硬姿勢は1996年に制定した「イラン・リビア制裁法(ILSA)」に始まり、今年7月には「イラン包括制裁法(CISADA)」が発効するなど、政権が交代しても一貫しているからだ。今回のINPEXの撤退の引き金となったのは、CISADAが課した厳しい制裁措置だ。これによれば、イランで石油、天然ガスの採掘などの上流分野に投資し、開発に参加している企業は米国内での活動や米系銀行からの資金調達が厳しい制約を受ける。
 油田、ガス田開発のように、見通せないリスクが多く、案件ごとに精査すべき条件が異なるプロジェクトでは、資金調達は経験の豊富な米系金融機関が主役となるケースが多い。新しい制裁措置には、これまで米国の意向に逆らって、イランでの石油開発に参加していたフランスのトタル、イタリアのENI、英蘭系のロイヤル・ダッチ・シェル、ノルウェーのスタットオイルのような欧州系の有力石油会社すら屈せざるを得なかった。INPEXの撤退は当たり前なのだ。
 米国が対イラン強硬姿勢を貫いているのは、言うまでもなくイスラエルを守る目的だ。イランはイスラエルの存在を認めておらず、アフマディネジャド大統領がイスラエル殲滅を口にするなど、イスラエルを徹底的に敵視している。イラクのフセイン政権が倒され、リビアが対米欧融和に転じた後、中東においてイスラエルの最大の敵対国はイランであり、一発でイスラエル全土を破壊できる核兵器をイランに保有させることはイスラエルにとって断じて容認できることではない。それはイスラエルの保護者である米国も同じだが、米国自身は「9.11テロ」以降、自国に核兵器が持ち込まれ、核テロの対象になることを懸念しており、イスラエルとは別の理由でイランに核兵器を持たせることはできないのである。

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