天下り問題再論: 「天下りの実態隠ぺい」は最もやってはならないこと

原英史
執筆者:原英史 2010年10月17日
カテゴリ: 政治
エリア: 日本

 

13日のエントリー(「1590人の裏下りと再就職等監視委員会」)につき、コメントをいただいていました。説明が不十分だった点もあるかと思いますので、再論しておきたいと思います。
 
いただいたコメントは、要するに、「すぐに天下りをなくすのは無理があり、きちんと公務員を処遇する体制を作ってから、天下りを禁止すべきだ。現行法の再就職等監視委員会は時期尚早であり、改正して廃止すべきだ」というご趣旨でした。
 
ただ天下り禁止だけ唱えても無理、という点はそのとおりです。
 
一方で、民主党政権の方たちは、どうも、政権についてようやく「天下りをすぐに根絶なんてできないんだ」と気付いたように見受けられます。
水面下での「裏下り」を容認し、また、(天下りとは別モノと称して)「現役出向」という抜け道を作るなどの逆走が続いているのは、おそらく、そういうことなのでしょう。
 
これまでの公務員制度改革の経過を考えれば、何をいまさら・・・という話なのですが(注)、仮にそうだとしたら、最低限なすべきことは、正直に「天下りをすぐには根絶できない」と国民に説明し、現状と今後の方策を明らかにすることです。
 
(注)これまでの公務員制度改革の経過では、
・安倍内閣での国家公務員法改正では、経過措置(かつて民主党の人たちが「天下りバンク」と強く批判した官民人材交流センターなど)を設けつつ、天下り斡旋の禁止を定め、
・一方で、福田内閣での国家公務員制度改革基本法で、公務員の処遇を含めた全体の改革を進める(基本法の規定では、法制上の措置はすべて2011年6月まで)、
ということになっていた。つまり、本来ならば、そろそろ全体改革が完了するタイミング。
 
ところが、菅内閣がやっていることは、全く逆です。
表向きは「天下りはもう根絶している」と言い続けながら、裏では「裏下り」や「現役出向」を容認する。
これでは、天下りの本当の実態が覆い隠され、従来以上に不透明になり、ムダ遣いなど「天下りの弊害」が拡大することになりかねません。
 
「直ちに根絶」すべきか「段階的に根絶」かは、議論があってよいと思います。もし菅内閣が本心では「直ちに根絶は無理」と思っているなら、正面からそう説明し、要すれば国会で議論したらよいでしょう。
しかし、いずれの道をとるにせよ、大前提として、天下りの実態をきちんと“見える状態”にしておくことは不可欠です。
そのために、「再就職等監視委員会」は早急に立ち上げ、“見えないところでの裏下り”は即刻なくすべきだと思います。
 
 
(原 英史)
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執筆者プロフィール
原英史
原英史 1966年東京都生れ。東京大学法学部卒、米シカゴ大学院修了。89年通商産業省(現・経済産業省)入省。大臣官房企画官、中小企業庁制度審議室長などを経て、2007年から安倍・福田内閣で行政改革・規制改革担当大臣の補佐官を務める。09年7月退職。株式会社政策工房を設立し、政策コンサルティング業を営む。大阪府・市特別顧問、国家戦略特区ワーキンググループ委員(内閣府)、社会保障審議会年金事業管理部会委員(厚生労働省)を務めるほか、NPO法人万年野党理事、「地方議会を変える国民会議」発起人など。著書に『官僚のレトリック』(2010年、新潮社)、『「規制」を変えれば電気も足りる』(2011年、小学館101新書)、『日本人を縛りつける役人の掟/岩盤規制を打ち破れ』(2014年、小学館)、『国家と官僚』(2015年、祥伝社新書)。
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