インド、19年ぶりの安保理入りで問われる真価

執筆者:山田剛 2010年10月22日
エリア: アジア

 

 日本のメディアではなぜか、この問題があまり報じられていないのだが、国連安保理は1012日、20111月から2年間の任期を担う非常任理事国の改選を行い、インドや南アフリカ、ドイツなど5カ国が新たに安保理入りした。これにより、高度経済成長で世界から注目される「BRICs」がすべて安保理に顔をそろえることになるのだが、その一角を占めるインドの当選は1992年末に任期が終わって以来19年ぶり。経済改革を成功させ、新興国の雄と目されるようになってからはもちろん初めてとなる。
 インドは国連加盟国192カ国のうち、今回選ばれた5カ国の中では最高の187票を獲得。紛争が絶えない隣国パキスタンまでもがインドに1票を投じた。これを受けてクリシュナ外相は「国際社会のインドに対する期待の表れ」と胸を張り、「インドは安保理常任理事国入りを目指している」とのアピールも忘れなかった。
 ASEAN(東南アジア諸国連合)+6やG20など、新たな国際社会の枠組みにおいてインドは確かに急速にその存在感を高めている。だが、かつて非同盟外交を推進し独自の社会主義的経済運営を実践してきたインドは、隣国パキスタンや中国との紛争や核開発問題などもあって、自国への内政干渉をかたくなまでに拒否する一方、国際社会が抱える紛争の解決に関してもほとんど積極的な貢献はしてこなかった。唯一、大量の兵員をPKO(国連平和維持活動)として紛争地に送り込んできた実績が光っているだけだ。
 19年ぶり7回目の安保理入りはインドにとってこれまでとは全く勝手が違ったものになりそうだ。湾岸戦争やイラク戦争を経て、国際紛争に対応する国連の役割も大きく変質している。インドの任期中には、北朝鮮やイラン、ミャンマーへの制裁や、未来永劫解決不能とも思えるパレスチナ問題に対する明確な意思表明が求められる。
 常任理事国入りを目指すレースにおいては日本よりもゴールに近いといわれているインドだが、こうした難題にきっちり向き合い、責任を果たさない限りその期待は瞬時に失望へと変わる可能性もある。国際社会は厳しい目で見守っている。                    (山田 剛)
 
カテゴリ: 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
山田剛(やまだごう) 日本経済研究センター主任研究員。1963年生れ。日本経済新聞社入社後、国際部、商品部などを経て、97年にバーレーン支局長兼テヘラン支局長、2004年にニューデリー支局長。08年から現職。中東・イスラム世界やインド・南アジアの経済・政治を専門とする。著書に『知識ゼロからのインド経済入門』(幻冬舎)などがある。
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