ビビアン・スーの涙の抗議が呼んだ波紋

野嶋剛
執筆者:野嶋剛 2010年10月26日

開催中の東京国際映画祭で、台湾の呼称をめぐってトラブルがありました。開幕式典のとき、中国の代表団が主催者側に対して、「台湾の代表団は『中国台湾』の名称を使うべきだ」と猛抗議したからです。台湾側は開幕式典に参加できず、中国側も主催者が要求を受け入れなかったため、参加を取りやめました。

台湾問題で「名前」をめぐるトラブルはしばしば起きますが、今回は台湾から主演映画のために来日していた女優のビビアン・スーが涙の抗議会見をしたこともあって、台湾のメディアも大々的に報道し、最近は「いい話」が多かった中台間で久々の対立局面となりました。

台湾の正式な国名は「中華民国」ですが、大半の国が承認していないので、こういうケースで普通は「台湾」とし、オリンピックなど国家の代表が争う場所では「中華台北」とすることで、お互いの妥協が成立しています。

ところが、今回、中国側は「中国台湾」にしろと言ったわけです。これでは台湾は中国の一部ということになってしまい、台湾だけでなく、日本側も飲めるはずがありません。日本も日中共同声明で「一つの中国」を理解し、尊重するとはしていますが、中国の主張をすべて受け入れると言っているわけではなく、今回のようなケースは拒否するのが普通です。

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執筆者プロフィール
野嶋剛
野嶋剛 1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に「イラク戦争従軍記」(朝日新聞社)、「ふたつの故宮博物院」(新潮選書)、「謎の名画・清明上河図」(勉誠出版)、「銀輪の巨人ジャイアント」(東洋経済新報社)、「ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち」(講談社)、「認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾」(明石書店)、訳書に「チャイニーズ・ライフ」(明石書店)。
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