経済の頭で考えたこと
経済の頭で考えたこと(29)

「北の崩壊」を見据える韓国の思案

田中直毅
執筆者:田中直毅 2010年11月5日
カテゴリ: 国際
エリア: 朝鮮半島
G20のホストを務める韓国の李明博大統領 (C)AFP=時事
G20のホストを務める韓国の李明博大統領 (C)AFP=時事

 G20の首脳会議を、G8以外の国ではじめて開催する韓国。首都ソウルにはある種の熱気が感じられた。李明博(イ・ミョンバク)政権がG20の誘致に熱心であったのは理解できる。北朝鮮の軍事的冒険主義は依然として止んでいない。今年の3月に、彼らは韓国の哨戒艦を沈没させた。なにしろ北朝鮮のGDPは韓国のわずか38分の1にすぎない。実際に「熱戦」が始まったからといって、もともと「焦土でしかない」北朝鮮の産業基盤は、賭け金としては安いものだ。これに対して韓国は1人あたりおよそ2.1万ドルのGDP生産に達している。巻き添えを食って困るのは、もちろん韓国の方だ。  秩序破壊の意味を、北朝鮮側に非軍事的な手段で知らせるには、G20の首脳をソウルに呼び集める企ては最適であった。なぜならば、各国首脳を招集する能力を証明できれば、北朝鮮はこれを計算外にすることはできず、韓国の立場が優位化することは間違いないからだ。このことが韓国の内外で認知されたがゆえに、韓国の対北朝鮮対応には、多少ともゆとりがみられるようになった。いわば大人の対応に入る余裕が出たといえる。  李明博大統領には、G20を前に海外からのインタビュー取材が相次ぐ。こうした折に「中国と同様の経済の開放路線を、北朝鮮に勧めたい」という発言が大統領から出るようになった。金大中(キム・デジュン)と盧武鉉(ノ・ムヒョン)という前任の2人の大統領は、北朝鮮に対して「太陽政策」を採用した。結果は戦争の危機を当面回避できたに過ぎず、北朝鮮の人権状況にも、また経済改革にも見るべき改善は何もなかった。彼らは外套を脱がせることに成功しなかったのだ。  李明博大統領は北朝鮮に対して「太陽政策」のような単なる宥和政策をとるつもりはなかった。そういう意味では金大中以前に戻ったといえる。北朝鮮とはミニ対決姿勢に入ったといえよう。ところがその大統領が、北朝鮮に対して中国型の開放路線を唱導する側に回ったのだ。これはG20首脳会議の開催だけで説明できる話ではない。大統領の考える政治日程の射程に何が映ったといえるのか。3つの仮説を提示したい

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執筆者プロフィール
田中直毅
田中直毅 国際公共政策研究センター理事長。1945年生れ。国民経済研究協会主任研究員を経て、84年より本格的に評論活動を始める。専門は国際政治・経済。2007年4月から現職。政府審議会委員を多数歴任。著書に『最後の十年 日本経済の構想』(日本経済新聞社)、『マネーが止まった』(講談社)などがある。
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