映画「南京!南京!」は抗日映画か(2)

野嶋剛
執筆者:野嶋剛 2010年11月8日

 尖閣問題でビデオが流出し、犯人捜しに関心が集中していますが、私としては今後は純粋な刑事問題として、それこそ「粛々」とやればいいだけで、政治問題化する必要はないと考えています。なぜなら、この流出によって国民は具体的な不利益を被ってはいないからです。もっと重要な問題は、これほど明確に中国漁船の粗暴な振る舞いを証明できるビデオをなぜ早期に公表し、中国との交渉のカードに利用しなかったのか、あるいは、できなかったのか、ということです。このことの方が国益を害したと私は思います。民主党は本来、情報公開を是として戦ってきた党です。中国に配慮し、密室で処理する作法自体がおかしかったのです。流出元の特定騒ぎは、民主党政権による意図的な論点ずらしのにおいがします。

さて、本題の映画「南京!南京!」の続編です。

中国で大ヒットした映画「南京!南京」に出演した俳優の木幡竜さんは、南京大虐殺をテーマにしたこの映画が「抗日映画ではない」と断言し、その理由をこう説明しました

「監督の陸川は、自分は世界に通用する映画を撮りたい、中国人しか楽しめない映画は撮らない、というポリシーを持っている人間です。陸川は従来の抗日映画は中国人が楽しめても、日本人を含めた外国人には興味を持てないもので、それでは世界に打って出れない、ユニバーサルな価値観を持ちえないという風に、批判的に考えています。この映画は、戦争や殺人や死に向き合う人間の葛藤を描いており、単純に共産党の抗日戦の勝利を描いてはいません」

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執筆者プロフィール
野嶋剛
野嶋剛 1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に「イラク戦争従軍記」(朝日新聞社)、「ふたつの故宮博物院」(新潮選書)、「謎の名画・清明上河図」(勉誠出版)、「銀輪の巨人ジャイアント」(東洋経済新報社)、「ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち」(講談社)、「認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾」(明石書店)、訳書に「チャイニーズ・ライフ」(明石書店)。
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