オバマ訪印~インドに外交的大量得点

 

歴史的な米印原子力協定締結をはじめ、インドへの肩入れが際立っていたブッシュ米前政権と比べてアメリカはどこまでインドにコミットするのか――。今月はじめのオバマ米大統領の訪印はインド内外から注目されたが、結果はブッシュ時代に比肩しうる米印の蜜月がアピールされ、インドにより多くの外交的得点が入った形となった。野党転落後は政府の揚げ足取りが目立っていたインド人民党(BJP)や、反米のイデオロギーに凝り固まっていた左翼政党も、今回ばかりはイチャモンのつけようがないと見えて、非常に静かなものだ。
 今回の訪印では、総額100億ドルに達する商談をまとめる手柄を挙げ、インドに気を使いながらも、自国の雇用を守ることを強調して見せたオバマ大統領だったが、内容はインド側を喜ばせるお土産が満載だった。
 まずは前政権同様に手形を切ったインドの国連安保理常任理事国入りへの支持表明。これには後日、「NPT(核拡散防止条約)問題とはリンクしていません」(国務省報道官)というオマケまでついた。また米政府と米財界は、インド側ビジネスマンらと共同で総額100億ドル規模のインフラ開発基金の設立を提案。もちろんインド政府にとっては願ってもない話だ。
さらに米印合意には、1960年代に小麦の品種改良などで穀物自給を達成した「緑の革命」を意識した「エバーグリーン革命」が盛り込まれ、米国が農業分野でインドを全面支援。主に収穫後の貯蔵・輸送ロスを低減するインフラ投資や、食料安保体制構築をバックアップすることになる。
かねて米国では、「印BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング=ITなどを活用した業務受託)産業が米国の雇用を奪っている」との批判があったが、オバマ大統領は共同記者会見でこうした見方を否定。インド企業による米国内での5万人に及ぶ雇用創出に理解を示し、「アメリカは保護主義に走ることはしない」と明言したのだった。
 米印二国間の貿易額は2010年度、前年度比30%増の500億ドル到達が有望視されている。M&Aも含めたインド企業の対米投資も確実に増加している。肝心の米印原子力協力は、8月末に印国会が可決した「原子力損害賠償法」によって、やや雲行きが怪しくなっているものの、全方位外交を推進するインドにとっても米国が政治・経済における最大のパートナーであることに当面変わりはないといえそうだ。
                           (山田 剛)
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執筆者プロフィール
山田剛 日本経済研究センター主任研究員。1963年生れ。日本経済新聞社入社後、国際部、商品部などを経て、97年にバーレーン支局長兼テヘラン支局長、2004年にニューデリー支局長。08年から現職。中東・イスラム世界やインド・南アジアの経済・政治を専門とする。著書に『知識ゼロからのインド経済入門』(幻冬舎)などがある。
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