「北朝鮮砲撃」あふれかえる報道をどう読むか

平井久志
執筆者:平井久志 2010年11月26日
カテゴリ: 国際 政治
エリア: 朝鮮半島

 北朝鮮による延坪島砲撃は1953年に朝鮮戦争の休戦協定締結以来、初めての陸地への砲撃であり、民間人にまで2人の死者を出した。

 明白な休戦協定違反だが、北朝鮮の意図やどういう見通しに乗っ取った軍事行動なのかについてはさまざまな見方が出ている。

 その中で、韓国のいくつかのメディアは25日、金正日総書記が三男の金正恩党中央軍事委副委員長を連れて、今回の砲撃が起こった基地の上部部隊である黄海南道康翎郡にある康翎砲兵部隊を21日に訪問したと報じ、延坪島砲撃は金正日総書記、金正恩副委員長の父子が主導した計画的な挑発だとした。

 その中で最も詳しく報じた中央日報は、韓国政府当局者の話として、金正日総書記は康翎砲兵大隊で、北朝鮮の海岸砲の性能と韓国の海兵隊が延坪島で実施した過去の射撃訓練状況について説明を受けたと報じた。

 中央日報によると、北朝鮮の朝鮮中央通信は22日、金正日父子が海岸砲基地から約80キロ離れた黄海南道龍淵郡の龍湖アヒル工場、龍淵海辺養魚事業所と龍井養魚場を訪問したとだけ報じ、康翎砲兵大隊訪問については報じない「欺瞞戦術」を使ったとした。

 中央日報は「金正日総書記の龍淵訪問には金元弘軍保衛司令官、金明国総参謀部作戦局長、国防委員会局長の玄哲海、李明秀大将ら軍の核心側近が随行したと北朝鮮メディアは伝えた」とし、「北朝鮮軍の作戦責任者である金明国が金正日の経済現場訪問にほとんど随行しない点と、国防委の軍部核心たちが随行したことは、今回の訪問が延坪島攻撃とかみ合っていることを強く示唆した」と報じた。さらに「外交安保部署のある当局者は『既に金正日が平壌を離れる前に延坪島に対する攻撃の決心をして作戦局長と軍の人間を連れて行ったと見る。経済現場を訪問し、注意を分散させ、海軍指揮部隊現場を訪問し、攻撃を最終裁可するなど延坪島攻撃は緻密に準備された後に進行したものとみられる』と述べた」と報じた。

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執筆者プロフィール
平井久志
平井久志 ジャーナリスト。1952年香川県生れ。75年早稲田大学法学部卒業、共同通信社に入社。外信部、ソウル支局長、北京特派員、編集委員兼論説委員などを経て2012年3月に定年退社。現在、共同通信客員論説委員。2002年、瀋陽事件報道で新聞協会賞受賞。同年、瀋陽事件や北朝鮮経済改革などの朝鮮問題報道でボーン・上田賞受賞。 著書に『ソウル打令―反日と嫌韓の谷間で―』『日韓子育て戦争―「虹」と「星」が架ける橋―』(共に徳間書店)、『コリア打令―あまりにダイナミックな韓国人の現住所―』(ビジネス社)、『なぜ北朝鮮は孤立するのか 金正日 破局へ向かう「先軍体制」』(新潮選書)『北朝鮮の指導体制と後継 金正日から金正恩へ』(岩波現代文庫)など。
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