アジアを襲うインフレ圧力の脅威

執筆者:新田賢吾 2010年12月10日

 世界経済の牽引車となり、先進国の停滞とは対照的に力強い成長を続けるアジアを今、インフレの大波が襲っている。インフレは新興国にとって急成長の代償ともいえるが、今襲いかかるインフレは、中国、インドなどアジアの新興国の成長メカニズムに潜む宿痾であり、世界経済にとって大きな脅威になる恐れがある。アジアのインフレを決して軽くみるべきではない。

日本以外は軒並み高水準

インフレは庶民生活を直撃する(c)EPA=時事
インフレは庶民生活を直撃する(c)EPA=時事

 中国の10月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で4.4%の上昇となり、リーマンショックの起きた2008年9月の4.6%以来の高さとなった。年初からみても1月の1.5%が4月には2.8%、7月に3.3%とほぼ一直線にインフレ率が高まってきた。インドの卸売物価指数は同じ10月に8.58%と、4カ月前の2ケタ上昇からはやや低下したものの、依然、不気味な高水準が続いている。  ASEAN(東南アジア諸国連合)でも状況は同じだ。域内の高成長国として今年に入って世界から注目されているインドネシアのインフレ率は、政府発表では10月に5.7%と中央銀行のターゲットゾーンである4-6%に収まっているが、統計対象の取り方などに問題があるとも言われ、専門家によっては「実際は10%を超えている」との見方がある。「ポスト中国」の呼び声も高いベトナムは1-9月期のCPI上昇率が8.6%という高い水準にあり、インフレの一段の高進を懸念する声が増えている。タイも3%前後の水準が続いており、低下する気配はない。ASEAN唯一の先進国であるシンガポールも3%超の水準が続いており、政府は今春から警戒モードに入っている。  韓国も下半期に入って3%前後のインフレ率で推移しており、2年ぶりの高水準を続けている。アジアで今、インフレ懸念にさらされていないのは、依然として物価下落、所得低迷が続く日本だけなのだ。

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