堕ちゆく世界の迷走
堕ちゆく世界の迷走(4)

米経済「偽りの夜明け」に縋る日本

執筆者:青柳尚志 2010年12月24日
エリア: 日本
米民主党大敗の余沢が日本株にも(c)AFP=時事
米民主党大敗の余沢が日本株にも(c)AFP=時事

 師走の風景は瀬戸際モードになっている。菅直人首相は小沢一郎民主党元代表に、衆院政治倫理審査会への出席を求め、ダメなら証人喚問をと、ちらつかせる。民主党分裂か政権崩壊という場面なのに、マーケットを取り巻く雰囲気は微妙に好転している。経済の政治離れというのとは違う。米国の景気が不思議と明るさを取り戻しているからだ。米中間選挙でオバマ政権の与党民主党が大敗したのを機に、経済の世界にはちょっとした小春日和が訪れているように見える。  その詮索をする前に、先月来の出来事を振り返ってみよう。何よりも大きかったのは11月23日、黄海の南北境界水域を越えて北朝鮮が韓国・延坪島を砲撃し、民間人にも死傷者が出たことだろう。それに対抗すべく、米韓は中国の庭先である黄海で合同演習に出た。すわ一触即発かと世間は色めき立ったが、情報分析のプロは「東アジアで起きた最も重要な出来事は別にある」という。

核開発で「危機の掛け金」を積み増す北朝鮮

 それは訪朝した米ロスアラモス研究所のヘッカー元所長に、北朝鮮が約2000基のウラン濃縮用の遠心分離器を見せたことである。北朝鮮は2002年にブッシュ政権のケリー国務次官補にウラン濃縮を認めたと言われたが、その後は一貫して白を切ってきた。ところが、よりによってその道の専門家にウラン濃縮装置を見せたのは、北朝鮮が核開発の能力を誇示したことにほかならない。
 北朝鮮は危機の掛け金を積み増す一方で、訪朝した米ニューメキシコ州のリチャードソン知事に、寧辺のウラン濃縮施設への国際原子力機関(IAEA)の監視要員を受け入れるといった。危機を募らせることをレバレッジ(てこ)として、米国との直接対話の窓は開きたいという北朝鮮のお家芸が、今回も披露されたとみるべきだろう。オバマ政権や韓国の李明博政権はアッサリと飲む訳にはいくまいが、北の核を所与の前提とする朝鮮半島の現状(ステータス・クオ)が組み立てられつつあるようにみえる。
 一種の瀬戸際戦略ともいえるが、金正日から金正恩への権力承継に伴い、核という暴力装置を体制維持のお守りにしようとしていることは、容易に想像がつく。その北朝鮮の崩壊を防ぐために、中国が陰に陽に金政権を支援していることも明らかである。案の定、国連安全保障理事会では、中国の横車で北朝鮮に対する非難決議は成立しなかった。

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