グローバル・ビジネスの新地政学
グローバル・ビジネスの新地政学(4)

アフリカが「ポスト・アジア」になるための課題

執筆者:森山伸五 2010年12月28日
カテゴリ: 国際 経済・ビジネス
エリア: アフリカ

「アフリカはポスト・アジアになるか?」
 こんな問いかけがグローバル企業の一部から出始めた。アジアの成長はまだまだ続くが、新たに出現する可能性のある巨大市場に先んじて橋頭堡を築こう、という発想だ。アジアが原油、天然ガス、非鉄金属などの地下資源にあまり恵まれず、低コストで豊富な労働力を成長の原動力にしてきたのに対し、アフリカは労働力以外にエネルギー・鉱物資源という強みを持つ。アジアが成長すればするほど資源需要は増加し、アフリカの成長は加速するという共生構造がある。

ネックは「平均寿命」と「教育」

アフリカは未熟練労働者が多いため、中国のゼネコンはコストが高くても中国人労働者を雇う (c)AFP=時事
アフリカは未熟練労働者が多いため、中国のゼネコンはコストが高くても中国人労働者を雇う (c)AFP=時事

 アフリカの発展にとって最大の課題は人材だ。アフリカ全体で人口は2010年に10億人を突破した。41億人の人口を抱えるアジアの4分の1の規模だ。だが、労働力を意味する生産年齢人口(15歳-64歳)でみると、アフリカは5億8200万人とアジアの27億9700万人に対して5分の1に縮小する。平均寿命が68.9歳のアジアに対し、アフリカは54.1歳と15歳近くも短いからだ。アフリカは依然として世界で最も短命の地域であり、アジアの後を追って成長するには、栄養、衛生、環境、治安などを改善し、労働人口を底上げする必要がある。 「中国人を1人連れていけば、地元の労働者10人分の仕事をするよ」。モザンビークで建設事業を受注している中国のゼネコン関係者はこう指摘する。農村から出稼ぎに来たアフリカの農民の大半は工場の生産ラインや建設現場の仕事の経験がない、まったくの未熟練労働力だ。失業率は高いものの、仕事で実績をあげなければ、という切迫感もあまりなく、「アフリカン・ペース」だという。実際、中国のゼネコンは中国の出稼ぎ農民で建設現場の経験が長い労働者をアフリカに送り込んでいる。  人件費コストは、当然ながら現地雇用の方がはるかに安い。法定最低賃金はモザンビークが月額2500メティカル(約6300円)で、タンザニアが月額85000タンザニア・シリング(約5000円)にすぎない。中国から連れてくる労働者は月収5000元(約63000円)と10倍前後で、しかも宿舎と1日3食を提供しなければならない。中国のゼネコンが高コストにもかかわらず中国人労働力を持ち込む点に、アフリカの成長のひとつのハードルが見て取れる。  工場労働や建設作業で、マニュアルや指示を理解するのに必要な読み書きや計算能力が低く、作業に必要な技術的基盤もほとんどない。義務教育や工業分野の職業訓練を充実させなければ、アフリカが外国企業の工場を誘致するのは難しいだろう。逆に中国人労働者は、今は活発な国内のインフラ建設が一巡し工事量が減った時の行き場を、アフリカに求めることができるかもしれない。

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