「個の時代」にこそ「小集団主義」を

2000年1月号
エリア: 日本

 ついに20世紀最後の年を迎えた。 年明け以来、さまざまなメディアで、「個の時代」の到来ということが盛んに論じられている。ここ数年間に起きた企業の大型倒産、金融機関の経営破綻、失業率の増加を通じて、多くの国民が「自己責任」と「個人武装」の必要を考えないわけにはいかなくなったことが背景にあると思われる。かつては官も企業の側も「よらしむべし、知らしむべからず」の姿勢が強かった。しかし、官僚の腐敗や企業スキャンダルが数多く表ざたになり、官や企業に「説明責任」が求められるようになった。国民の側には逆に、「自己判断」の責任が課せられることになる。 また、「個の時代」が強調されることには、情報技術革命が密接に関係している。インターネットによって、個人と個人が何の仲介もなく、直接つながるようになると、誰もが個人としての自立性を高めていかなくてはならないからだ。 昨秋以来、詩集として珍しくベストセラーとなった茨木のり子氏の『倚りかからず』(筑摩書房)の「もはや/いかなる権威にも倚りかかりたくはない/ながく生きて/心底学んだのはそれぐらい/じぶんの耳目/じぶんの二本足のみで立っていて/なに不都合のことやある」の一節に多くの共感が集まったのも、時代の気分に詩の内容が見事にフィットしていたからだろう。

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