インテリジェンス・ナウ
インテリジェンス・ナウ

ノルウェーが設置した宇宙ゴミレーダーの正体

春名幹男
執筆者:春名幹男 2000年3月号
カテゴリ: 国際
エリア: ヨーロッパ

 二年前の一九九八年三月二十四日、ノルウェー国防最高司令部が新聞発表を行なった。「バルデ(ノルウェー北端)にグローブス2レーダーを設置する。人工衛星と“宇宙のゴミ”を監視するのが任務。これによって、ノルウェー情報当局の能力を強化する」 オスロの有力紙アフテンポステンはそんな簡単な内容を米航空宇宙局(NASA)提供の“宇宙ゴミ”イラストとともに掲載した。 世間はあまり注目しなかったが、ノルウェー第二の都市ベルゲンのティデンデ紙の科学担当、インゲ・セレボーグ記者は気になり、フォロー取材に乗り出した。 まず、NASAジョンソン宇宙センター(ヒューストン)の宇宙ゴミ室にコンタクトして、グローブス2はNASAとは無関係なことが判明した。宇宙ゴミは隠れ蓑で、グローブス2は、ノルウェー軍と米空軍宇宙司令部の協力プロジェクトだったのだ。 バルデは北緯七〇度のすぐ北。北極海に面し、ロシア国境からわずか約六十五キロ。ここには、一九六〇年代から、旧ソ連海軍潜水艦を追跡し、地上発射ミサイル実験を監視するグローブス・レーダー施設が置かれてきた。 セレボーグ記者の熱心な取材で、グローブス2は、実は米本土ミサイル防衛(NMD)構想の一環として設置される最新鋭のレーダーであることが突き止められた。冷戦終結後、アメリカはいったんグローブスから撤退、メンテナンスの予算も引き揚げた。しかし、クリントン米政権はミサイル防衛計画に関心を示した。

この記事は役に立ちましたか?
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
この記事をSNSにシェアする
執筆者プロフィール
春名幹男
春名幹男 1946年京都市生れ。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒業。共同通信社に入社し、大阪社会部、本社外信部、ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て93年ワシントン支局長。2004年特別編集委員。07年退社。名古屋大学大学院教授を経て、現在、早稲田大学客員教授。95年ボーン・上田記念国際記者賞、04年日本記者クラブ賞受賞。著書に『核地政学入門』(日刊工業新聞社)、『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『スクリュー音が消えた』(新潮社)、『秘密のファイル』(新潮文庫)、『スパイはなんでも知っている』(新潮社)などがある。
comment:0
icon
  • 記事の閲覧、コメントの投稿には、会員登録が必要になります。
フォーサイトのお申し込み
注目記事ランキング
  • 24時間
  • 1週間
  • f
  • 新着
  • 高評価
  • コメント数順