微妙な均衡の上に立つ「流砂の世界」中央アジア

執筆者:浅井信雄 2000年3月号
カテゴリ: 国際 文化・歴史

 中央アジアはわかりにくい。一九九九年八月、キルギスで日本人を拉致した武装勢力の性格を考えると、その理由が少しわかってくる。 ほぼ時計と逆回りに、キルギスからカザフスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタン、タジキスタンが存在する。各国の人口構成はキルギス人、カザフ人、ウズベク人、トルクメン人、タジク人がそれぞれ最大である。 かつては旧ソ連邦(十五共和国で構成)に所属していたが、ソ連崩壊後はロシアなど十二共和国で構成する独立国家共同体(CIS)の加盟国となった。うち上記五カ国はしばしば「中央アジア五カ国」として共同行動をとる。中央アジアの南には、南西アジア・中東のイスラム世界が広がり、アフガニスタン、パキスタン、イラン、サウジアラビア、トルコなどと関係が深い。 さて、キルギスでの日本人拉致勢力の指導者たちは、国境を挟んで隣国ウズベキスタン側のフェルガナ盆地のナマンガン地方出身であり、ウズベキスタンのカリモフ政権打倒を目ざす「ウズベキスタン・イスラム運動」を指揮し、またタジキスタンの内戦でも反政府勢力の側に立って戦っていた。 カリモフ政権は他の中央アジア諸国支配層から支持されているが、その裏返しとしてウズベキスタンの反政府勢力を他の中央アジア諸国の反政府勢力が支持するという構図にある。イスラム勢力の不満と反発のエネルギーは貧困、宗教規制などに発している。民主的手続きでは解決不能と考えた人たちが武装闘争に傾くのだ。

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