【今月の2冊】 20世紀を照射する百年前の世界の考察

2000年3月号
カテゴリ: 文化・歴史 書評

「……気付くのは、二十世紀を性格づける要素の萌芽は、十九世紀の末にはことごとく地中に内在しており、決して歴史は脈絡なく突然に変わるものではないということである」(寺島実郎『一九〇〇年への旅』新潮社刊 一五〇〇円) 本書は、現在、アメリカ・太平洋篇を本誌に連載中の「一九〇〇年への旅」の欧州篇をまとめたものである。本書の根本的な意図は、サブタイトルの「あるいは、道に迷わば年輪を見よ」という言葉に集約されている。二十一世紀に差し掛かろうとしている今日こそ、いま一度二十世紀の歴史をきちんと見つめ直そうという姿勢である。 現在、二十世紀の回顧ものの出版が盛んにされる中で、本書を際立たせているのは、二十世紀を総括するにあたり、ちょうど百年前の一九〇〇年前後に焦点を絞り、その転換期に生きた人々の行動・思索の軌跡を、丹念な取材と膨大な資料渉猟でたどるという斬新な手法をとったことである。しかも、単なる資料主義に陥らず、歴史の現場に実際に足を運ぶという旅を加味することで、考察に深みが増している。「一九〇〇年の地球を輪切りにするように思索するアプローチ」が、時代を立体的に浮かび上がらせているのだ。 この欧州篇で取り上げられているのは、マルクス、ケインズ、ヒットラー、ムッソリーニ、フランコ、ピカソ、フロイトなど、二十世紀全体に大きな影響を与えた歴史的巨人たちであり、明治期に視察や留学でヨーロッパに渡った夏目漱石、森鴎外、南方熊楠、秋山真之などの日本人たちである。知っているようで、意外に知られざる事実も数多く出てくる。それこそ歴史を学ぶ醍醐味だろう。

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