一枚岩には凝固しない台湾の民族的アイデンティティ

執筆者:浅井信雄 2000年5月号
カテゴリ: 国際 文化・歴史
エリア: 中国・台湾

 台湾の民族や住民のアイデンティティ(帰属)意識を議論するには、彼らの呼び方から始めるのがよい。それによって、重要な政治的意味が浮き彫りになるからだ。たとえば「中国人」なのか「台湾人」なのかである。 二〇〇〇年三月の総統選挙で当選した陳水扁氏に対して、中国の政府系研究者は「自らが中国人であると公式に表明せよ」と迫った。当選後はトーンを落としたものの、過去に台湾独立論を唱え、いまも公然と台湾語を話す陳氏が、もし「自分は台湾人だ」とあえて公言するならば、中国側は陳氏に台湾独立意図ありと疑うだろう。「中国人」か「台湾人」かの帰属意識は台湾住民全体ではどうか。台湾・政治大学の研究者が九八年の時点で調べたところでは、「台湾人」とした者四四%に対し「中国人」一〇%、「どちらともいえる」という、華僑的意識の持ち主が四二%だった。 九四年の調査で見ると、それぞれ二九%、二四%、四三%だったので、四年間で「台湾人」意識が大幅に拡まったとはいえるが、「中国人」と「台湾人」の両方という二重帰属意識を持つ割合に大きな変化はなく、かなり多い。「中国人」か「台湾人」かは、「外省人」か「本省人」かの問いに部分的に重なっている。

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