994万台

執筆者:伊藤洋一 2000年5月号

 九九年度に日本で売れたパソコンの台数である。前年度比で三二%という大幅な増加で、過去最高。しかもこれは日本電子工業振興協会とりまとめ分だけで、非加盟のコンパックやデルを加えれば一〇〇〇万台の大台に到達したことは確実。一億二六〇〇万人の人口の日本でほぼ十人に一人が一台を買った勘定になるが、もっと重要なポイントは「同年度の九七五万台という日本のカラーテレビ出荷台数」をパソコンが上回った点である。 パソコンは、従来の製品分類で言えば「ハイテク」である。しかし、成熟市場のカラーテレビより出荷台数が多くなった今の段階でも、パソコンは「ハイテク」だろうか。グーテンベルクが印刷術を発明したとき、それは当時のハイテクだったに違いない。しかし、どのようなハイテクも、時間の経過と世の中への普及の中で、「レグテク」(regular technology)になる。 筆者はこの「九九四万台」をもってパソコンやパソコンができることは特別なことではなく、当たり前の普通のことになったと考える。世の中が分類をなかなか変えられないだけである。惰性で「ハイテク」と呼ばれているものには、パソコンと同じ地位にあるものが一杯ある。インターネットもそうだろう。ただPC、ネットというだけで本当の意味で「ハイテク」とは分類しがたい。であるが故に、「普通になったハイテク」企業の株価に、普通の、常識と過去の経験則に沿った株価水準が適用されるのは普通ではないか。四、五月のハイテク株の世界的な下落は、ハイテクが「レグテク」になるプロセスの中で起きた修正である。

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