64分の1

執筆者:伊藤洋一 2000年6月号
エリア: 日本

「二四万一〇〇〇円→三七六〇円」。最初が今年二月十五日に付けた光通信の過去最高値、あとが六月二日に付けた年初来安値(ともに脱稿時点)。実に六四分の一。六四万円の投資が一万円になったことになる。世界の相場の歴史をひっくり返しても、市場そのものの消滅以外にはたった四カ月弱でこれだけ水準を切り下げたものは数少ないだろう。 一時はハイテク株の代表のように言われた同社の株が「バブルだった」かどうかは問わない。そうではなく、この数字から改めて二つの強いメッセージが聞こえてくるのである。これは、株価評価以前の問題である。 第一に、市場で一番重要なのは「流動性だ」ということである。売りたいときに売れる市場があることが投資の大前提である。買うのは誰にでも出来る。難しいのは売ることである。同社株は下げる過程で十何日も出会いがなかった。つまり、真空地帯を下げたのだ。流動性の見極めは難しい。しかし、実は価格の推移より出来高の推移を見る方がしばしば重要なのである。光通信はもともと特定株主比率(特定の株主に集中している)が高かった。一度市場が売りに回れば、流動性が枯渇する可能性は高かったのである。 次に「行列を作ってはいけない」ということである。光通信は九九年の年間値上がり率で二八四九・六%と断然のトップ。もう既に列は延々と長かったのだ。相場を正当化する理論はいつでも登場する。しかしそれがどんなに素晴らしく見えても、投資では長くなった列には付いてはいけないのである。

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