フランスの国家原則を揺るがす「イスラム」の台頭

執筆者:立山良司 2000年9月号
カテゴリ: 国際 文化・歴史
エリア: ヨーロッパ

 学校内でのヘジャブ(スカーフ)着用問題が、フランスの国家原則「ライシテ(世俗主義)」に新たな挑戦状を突きつけたのは一九八九年秋だった。パリ近郊の中学校で、ヘジャブを被ったまま授業を受けようとしたイスラム教徒の女生徒三人が「ライシテ」を理由に通学を禁止された事件は、国家や社会と宗教との関係に大論争を引き起こした。 フランスの「ライシテ」はフランス革命以来の伝統で、政治、行政、教育など公的な分野はすべて宗教との厳格な分離が求められている。ヘジャブ着用問題もその延長線上に位置しているが、ヘジャブは駄目で、十字架のネックレスなら構わないのか、というかなり根源的な問いかけに行きつく。 フランスのイスラム教徒は四百万とも六百万ともいわれ、カトリックに次ぐ二番目の宗教勢力だ。そのほとんどはモロッコやアルジェリアなど北アフリカから来た移民やその子供、孫達である。彼らイスラム教徒移民の第一世代は、他の国での移民第一世代と同様、「目立たない存在」に徹していた。いずれ母国に帰ることを夢見てひっそりと暮らしていた彼らにとって、フランスは所詮“外国”にすぎなかった。 だが、第二世代以降にとっては決して外国ではない。フランスは出生地主義をとっているため、第二世代以降は国籍もとれる。彼らは積極的に自らの存在を主張し始めた。その一つがイスラムへの回帰だ。フランスのモスクの数は八〇年代に入り急増し、現在は全国に千以上あるといわれる。毎週金曜日になると、パリのグランド・モスクには四千人以上が礼拝にやって来るし、付属の宗教学校に入るのは順番待ちだという。

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