インタルード 岡崎久彦『隣の国で考えたこと』

執筆者:船橋洋一 2000年10月号

 岡崎久彦がソウルの駐韓日本大使館に参事官として赴任したのは一九七三年十月だった。 東京のホテル・グランドパレスで韓国野党リーダーの金大中が誘拐されたのがその年の八月、日韓両国が激高し、手に負えなくなっている時だった。「そもそもボクが韓国へ行ったのは亡命したんですよ。ワシントンで牛場さんと二人で日中正常化に反対したら、牛場さん首になっちゃった」 岡崎一流のちょっと茶目っ気のあるドラマ性を刷り込んだ言い回しである。「牛場さん」は、牛場信彦駐米大使である。岡崎はそれでも足りないと思ったか、こう付け加えた。

カテゴリ: カルチャー
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執筆者プロフィール
船橋洋一(ふなばしよういち) アジア・パシフィック・イニシアティブ理事長。1944年北京生まれ。東京大学教養学部卒。1968年、朝日新聞社入社。朝日新聞社北京特派員、ワシントン特派員、アメリカ総局長、コラムニストを経て、2007年から2010年12月まで朝日新聞社主筆。米ハーバード大学ニーメンフェロー(1975-76年)、米国際経済研究所客員研究員(1987年)、慶應義塾大学法学博士号取得(1992年)、米コロンビア大学ドナルド・キーン・フェロー(2003年)、米ブルッキングズ研究所特別招聘スカラー(2005-06年)。2013年まで国際危機グループ(ICG)執行理事を務め、現在は、英国際問題戦略研究所(IISS)Advisory Council、三極委員会(Trilateral Commission)のメンバーである。2011年9月に日本再建イニシアティブを設立し、2016年、世界の最も優れたアジア報道に対して与えられる米スタンフォード大アジア太平洋研究所(APARC)のショレンスタイン・ジャーナリズム賞を日本人として初めて受賞。近著に『フクシマ戦記 10年後の「カウントダウン・メルトダウン」』(文藝春秋)、『自由主義の危機: 国際秩序と日本』(共著/東洋経済新報社)、『地経学とは何か』(文春新書)、『カウントダウン・メルトダウン』(第44回大宅賞受賞作/文春文庫)など著書多数。
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