「人間の仕事の進め方は、大きく分けて次の二つに分類できるのではないかと思う。一つ、そしてまた一つと、完成させては次に進むやり方。すべてを視野内に入れながら、それらすべてを同時進行的に進めていくやり方」(塩野七生『賢帝の世紀 ローマ人の物語IX』新潮社刊 三〇〇〇円) ローマの最盛期として名高い「五賢帝時代」の中で、トライアヌス、ハドリアヌス、アントニヌス・ピウスの三人の賢帝を取り上げたのが、待望のシリーズの第九巻である。ただ三賢帝とはいえ、実際の主人公は、トライアヌスとハドリアヌスの二人と言っていいだろう。対照的とも言える二人の指導者像が本書の最大の魅力だ。
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