未完に終わりかねないセルビア革命の危機

執筆者:ルイーズ・ブランソン 2000年12月号
カテゴリ: 国際
エリア: ヨーロッパ

独裁者ミロシェビッチは権力の座から引きずり降ろされた。だが民主主義への移行は決して容易なことではない。ユーゴを、世界の資金と支援を飲み尽くす「巨大なブラックホール」にしてしまわないためには、いま何が必要か。[ベオグラード発]ユーゴの独裁者として悪名を馳せたスロボダン・ミロシェビッチを権力の座から引きずり降ろした「民衆革命」が起こったのは十月初旬。それから二カ月が過ぎた。だが、セルビアには、まだ不穏な空気が漂っている。 この政変で決定的な役割を演じた学生運動グループ、「オトポール(抵抗)」が掲げるポスターは、現在の雰囲気を見事にとらえている。革命を象徴する巨大なパワーショベルの絵の下に、新大統領ボイスラブ・コシュトニツァとその側近に対する警告の文字が走り書きされているのだ。「我々はまだ監視の目を緩めてはいない」。 この言葉には、次のようなメッセージがこめられている――新たな政権も、いずれはミロシェビッチ政権と似たり寄ったりの腐敗にまみれるのではないか? そうでなくとも、無策無能なのではないか。彼らの掲げた「より良き生活」は実現されるのか? セルビアの名の下に民衆を扇動し、十年弱で四度の紛争に向かわせ、そのすべてに敗れた民族主義者の圧政に、セルビア人は十三年間も苦しみ抜いた。心理的にも、物理的にも、経済的にも、「より良き生活」は、セルビア人自身の望みでもあるのだ。

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執筆者プロフィール
ルイーズ・ブランソン イギリス出身。英『サンデー・タイムズ』紙モスクワ支局長を経てフリーランスに。米『ワシントン・ポスト』紙元モスクワ支局長で夫のダスコ・ドーダー氏との共著に『ミハイル・ゴルバチョフ』『ミロシェビッチ――暴君のポートレイト』がある。
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