鳥のように空を飛ぶのは、長いあいだ人間の夢だった。二十世紀が始まって三年目、ライト兄弟が人類初の動力飛行で、二百六十メートルの距離を飛ぶのに成功した。するとその世紀の終わる頃には、五百人以上の客を積んだ旅客機が飛んだり、音速の二倍を出せるまで、人間の技術は進歩していた。 夜空に浮かぶ赤い、どこか不吉な感じのする星も、大昔から人間に見上げられてきた。西洋人はその星から軍神を連想し、日本人は火星と呼んできた。 いま、二十一世紀が始まったばかりの時点で、人類はすでにかなり火星について知っている。マリナー、バイキング、サーベイヤーなどを打ち上げて火星を撮影し、また人工衛星を着陸させた。このペースでいくと、今世紀が終わる前に人間は火星の上に立つはずである。もし猛烈な砂あらしでなければ、人はそのとき火星上に何を見るだろうか?
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