質的変化を起こしたベンチャー投資の量的拡大

執筆者:梅田望夫 2001年2月号
カテゴリ: IT・メディア

 前回の本欄では、ネットバブル崩壊後のベンチャーキャピタルとベンチャービジネスについて概観したが、興味深い統計数字が発表されたので、その数字をめぐって、前回の議論を発展させてみたい。「二〇〇〇年第四四半期の米国のベンチャー投資総額は百九十六億ドル。第三四半期の二百八十三億ドルから三一%のダウン」(ウォールストリートジャーナル一月二十九日)だから、記事の見出しは「ベンチャー投資のペースが鈍化」となっている。新聞記事は一般的に、前期比を最重要視するので、ときに誤解を引き起こすわけだが、この記事の見出しはその典型と言える。「四半期で百九十六億ドル」、つまりバブル崩壊後も三カ月で二兆円以上の資金がベンチャーに投資されたというかつてない状況が続いていることにこそ、焦点を当てるべきだと思う。 ネット時代が到来する前のシリコンバレーを、私は本欄でもよく「世界の片隅で輝いていたシリコンバレー」と表現してきたが、ベンチャー投資の数字を見ればそれがよくわかる。 二〇〇〇年通年のベンチャー投資総額は千三十億ドル(十兆円を超えた!)だが、それに比べ、一九九〇年から九五年までは通年でそれぞれ、三十二億ドル、二十四億ドル、五十億ドル、四十九億ドル、五十二億ドル、五十四億ドルと安定した数字で推移している。驚くなかれ、「鈍化した」と表現される二〇〇〇年第四四半期の水準の約二十分の一。むろん七〇年代、八〇年代の投資額はもっと少なかった。

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執筆者プロフィール
梅田望夫 1960年東京都生れ。94年渡米、97年コンサルティング会社ミューズ・アソシエイツを起業。著書に『ウェブ進化論』(ちくま新書)、『ウェブ時代をゆく』(同)、『ウェブ時代 5つの定理』(文藝春秋)、『ウェブ人間論』(共著、新潮新書)など。メジャーリーグの野球、そして将棋の熱烈なファン。
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