精神主義と権力指向の狭間で揺れる「ロシア正教」

執筆者:立山良司 2001年3月号
カテゴリ: 国際 文化・歴史
エリア: ロシア

「二十世紀の最後の十年間に、ロシア正教会は精神的によみがえった」。ロシア正教会の総主教アレクシー二世は新年のメッセージで、正教会の復権を改めて強調した。確かにスターリンの命令で爆破され、温水プールとなっていたモスクワの「救世主ハリストス(キリスト)大聖堂」はすっかり再建され、金色のドームを輝かせている。ソ連崩壊時にはわずか十八しか残っていなかった修道院の数も五百に急増した。今年一月十六日にはプーチン大統領が「正教会はロシアにおける精神と道徳の復活に多大な貢献をした」と、アレクシー二世ら正教会の高位聖職者三十六人に勲章を授与した。 ロシア正史によると、ロシアがギリシャ正教を国教として受け入れたのは九八八年。十六世紀にモスクワはコンスタンチノープル(現イスタンブール)から離れ独立した総主教座となり、東方正教会の中核的な地位を占めた。自らを「聖なるロシア」と呼ぶほどロシア正教会はロシア民族の精神的な基盤となり、帝政時代は「帝国教会」としてツァーリ支配の重要な支柱だった。 ソ連時代、約二十万人の聖職者が殺害されたといわれる。それでも七〇年代になると正教会は次第に復権の兆しを見せ始め、ソ連が崩壊し新生ロシアへ移行した混乱期、人々は精神的な支えを正教会に求めた。九〇年代初めには、各地の教会前で洗礼を受けようとする信者が長蛇の列を作ったという。

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