アダモフ原子力相の更迭 その背景に何があるのか

執筆者: 2001年4月号
エリア: ヨーロッパ

 三月二十八日、ロシアのプーチン大統領は、イワノフ安全保障会議書記の新国防相への任命を含めた政府閣僚メンバーの一部入れ替えを実施した。ここで注目すべきは、アダモフ原子力相の更迭である。 去る三月十二日、イランのハタミ大統領がロシアを訪問し、ロシアからの武器購入問題などを協議した。一方、同じ時期にイワノフ氏がワシントンに派遣され、パウエル国務長官、ライス大統領補佐官と会談し、イランへの武器売却問題に関する状況説明等をアメリカ側に行なっている。 この時ロシアはアメリカに何を説明したのか。 アメリカは、ロシアがイラン・ブシェール原子力発電所の建設を通じて、イランに核関連技術を移転しているとの疑念を持っていたが、このブシェール原子力発電所建設計画のロシア側の推進者こそ、先に解任されたアダモフ原子力相だった。ロシア国内におけるエリツィン前大統領人脈に属するアダモフ原子力相の更迭は、プーチン大統領の国内政治基盤の強化を意味すると同時に、一連のスパイ追放事件などで悪化しつつあった対米関係の改善を狙った政治的シグナルだった可能性が高い。

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