ネットバブル崩壊をもう半年早く予感できたか

執筆者:梅田望夫 2001年4月号

 ネットバブル崩壊から約一年。四月四日現在のナスダック総合指数は一六三八・八〇。昨年三月十日に記録した最高値五一三二・五二の三分の一を既に下回り、まだ底が見えない状況にある。ベンチャーの株式公開(IPO)の道は相変わらずほぼ閉ざされたまま、ハイテク企業の時価総額の調整が続いている。 そんな逆風の中、私たちがエンジェルとして投資して育ててきたベンチャーが、ついに資金調達に成功した。彼らが資金調達に奔走し始めた昨年夏といえばまさにバブル崩壊の少し後。以来約九カ月。本当に長かったが、本当に良かった。 ベンチャーは資金が枯渇したところで「死んで」清算に入るわけだが、「とにかく死なないこと、生き続けること」を最優先事項に、銀行の残高と週単位の経費を常に計算しながら、創業者を含む経営陣がほぼ無給で数カ月を過ごし、耐えに耐えながら事業をつないできた。そして資金枯渇のタイムリミットぎりぎりで、とうとうある有力ベンチャーキャピタルが熟慮の末、投資にゴーサインを出したのだった。ちなみに、どんなに苦しくても、最後まで外部からの投資のみを追い求め、創業者の個人資産を担保にしての借金は絶対しないのがシリコンバレーのルールである。

カテゴリ: IT・メディア
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執筆者プロフィール
梅田望夫(うめだもちお) 1960年東京都生れ。94年渡米、97年コンサルティング会社ミューズ・アソシエイツを起業。著書に『ウェブ進化論』(ちくま新書)、『ウェブ時代をゆく』(同)、『ウェブ時代 5つの定理』(文藝春秋)、『ウェブ人間論』(共著、新潮新書)など。メジャーリーグの野球、そして将棋の熱烈なファン。
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