変化と多様化への対応が迫られる「タイの仏教」

執筆者:立山良司 2001年5月号
カテゴリ: 国際 文化・歴史

 タイの仏教関係のニュースには、やたらスキャンダラスな話が多い。厳しい戒律を守っているはずの僧が愛人を持っていたとか、麻薬に染まっていたといった類だ。破戒僧の現場を押さえるため、内偵捜査のような活動をしている僧侶グループもいるという。それでも、民衆の信仰心はきわめて強い。一九九七年のアジア経済危機の荒波をもろに受けたタイ経済を救おうと高僧の一人が浄財の拠出を呼びかけたところ、多額の現金と金製品が寄せられた。ただ、集まった浄財の使途をめぐり政府と僧との間で対立が生じ、それがまたスキャンダラスな話になってしまったが。 バンコクで目につくのは車の大渋滞と黄色い衣をまとった僧侶だ。タイやカンボジア、ミャンマーなど東南アジア諸国で主流の上座部仏教(いわゆる小乗仏教)では、出家という行為が重視される。出家者は男性に限られるが、「サンガ」と呼ばれる集団の中で戒律を守りながらひたすら解脱を目指して修行に励む。 現在タイには約三十万の僧侶がいて、人生の通過儀礼として一時的に出家する者の数を加えると四十万以上になると見られている。彼らは生産活動に従事しないため、生活の糧はすべて在家者の施しに頼っている。一方、在家者は僧侶に施しをすることで「功徳を積む」ことになる。功徳を積めば積むほど、死後に「神」として再生できると信じられているからだ。つまり出家者と在家者は相互依存関係にある。

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