いまだバルカンの火種は消えず

執筆者:ルイーズ・ブランソン 2001年5月号
カテゴリ: 国際
エリア: ヨーロッパ

「バルカンのサダム・フセイン」ミロシェビッチさえ排除すれば、セルビアは立ち直ると国際社会は考えてきた。だが今も、いたる所で紛争の火種が燻っている。下手をすれば、バルカン半島全域に戦火が広がる危険もある――。[スコピエ発]すべて世はこともなし――このところのバルカン情勢を眺めていると、少なくとも表面上は、実に穏やかだ。セルビアの元独裁者スロボダン・ミロシェビッチも、今はベオグラードの刑務所で裁きを待つ身。権力の座にあった十三年間に四度の紛争を引き起こした張本人として、いずれセルビア国内かハーグの国際戦犯法廷で(あるいはその両方で)断罪されるだろう。マケドニアでの民族蜂起も一時の勢いは失なわれ、新たな戦闘シーンや大量の難民の姿がテレビニュースを賑わすことも少なくなった。 これで、ようやく国連軍とNATO軍も高らかに平和を宣言し、凱旋できるのだろうか? とんでもない! 彼の地を訪れると、再び緊張の高まりつつあることが肌で感じられる。いつ暴動が起きてもおかしくない地域がいくつもあるのだ。 十年以上に及ぶ戦闘と暴動の日々、旧ユーゴスラビアの崩壊、経済の混乱、そして、バルカン半島から米軍を撤退させるというブッシュ新大統領の声明……新たなる不幸のレシピには様々な材料がのっているが、根底にあるのはただ一つ、民族間の憎しみだ。

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執筆者プロフィール
ルイーズ・ブランソン イギリス出身。英『サンデー・タイムズ』紙モスクワ支局長を経てフリーランスに。米『ワシントン・ポスト』紙元モスクワ支局長で夫のダスコ・ドーダー氏との共著に『ミハイル・ゴルバチョフ』『ミロシェビッチ――暴君のポートレイト』がある。
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