クオ・ヴァディス きみはどこへいくのか?

戦争に勝る国際理解はない

執筆者:徳岡孝夫 2001年6月号
エリア: アジア

 ウォルト・ディズニー社の奥まった一室で、誰かが「真珠湾の六十周年だ。これ、いこ!」と叫んだのだろう。例のブロックバスターというやつで、映画「パール・ハーバー」は物凄い制作費をかけて作られ、まずアメリカで封切られた。観客の出足好調だという。日本にもまもなく来る。 現地・真珠湾では、停泊中の空母の飛行甲板に大スクリーンを設け、約二千人を招いて見せたそうだ。協力した米海軍の「民間人」へのサービス精神。真珠湾のすぐ外では、「民間人」(その実は政治家や米海軍に好意的な金満家)を喜ばせるため、原潜グリーンビルは海面をロクに調べもせず急速浮上した。九人の遺体が、まだ海底にあるのに、彼らは有色人種の悲劇をサラリと忘れてしまったようである。

カテゴリ: 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
徳岡孝夫(とくおかたかお) 1930年大阪府生れ。京都大学文学部卒。毎日新聞社に入り、大阪本社社会部、サンデー毎日、英文毎日記者を務める。ベトナム戦争中には東南アジア特派員。1985年、学芸部編集委員を最後に退社、フリーに。主著に『五衰の人―三島由紀夫私記―』(第10回新潮学芸賞受賞)、『妻の肖像』『「民主主義」を疑え!』。訳書に、A・トフラー『第三の波』、D・キーン『日本文学史』など。86年に菊池寛賞受賞。
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