法王の正教会への「謝罪」でも癒されざる歴史の傷跡

執筆者:立山良司 2001年6月号
カテゴリ: 国際 文化・歴史

「過去から現在に至るまで、カトリック教会の息子や娘達は行動や黙殺で、(東方)正教会の兄弟姉妹に対し罪を犯してきた。その赦しを我々は主に乞う」――ローマ法王ヨハネ・パウロ二世はアテネ訪問中の五月四日、ギリシャ正教会のフリストドゥロス大主教を前にこう謝罪の言葉を述べた。 法王の今回のギリシャ、シリア、マルタ三カ国訪問は使徒パウロの足跡を辿る巡礼の旅だった。その中で最も注目されたのは、アテネ訪問時に東方正教会、特にその中心に位置するギリシャ正教会が長年、バチカンに突きつけてきた謝罪要求にどう答えるかだった。 キリスト教会は一〇五四年の相互破門で完全に東西に分裂した。聖霊が「父から発する」とする正教会と、「父と子から発する」との立場をとるカトリックとの教義上の違いに加え、ローマとコンスタンチノープル(イスタンブル)のライバル意識など政治的要因もあった。一二〇四年、第四回十字軍がコンスタンチノープルを攻撃し、多くの財宝や美術品を略奪すると、両教会の関係は修復不可能となってしまった。 現在でも正教会のバチカンに対する恨みは深い。今回の法王のアテネ訪問にも正教会は反対で、ステファノプロス・ギリシャ大統領が「バチカンの国家元首」として法王を招待、やっと実現した経緯がある。それでも正教会側の反発は収まらず、法王訪問前にはアテネなどで「法王は敵だ」「異端者の総帥」といったスローガンを掲げた反対デモが行なわれた。また、法王滞在中、半旗を掲げた教会もあったという。

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