中印が狙う「戦略拠点」ネパール

執筆者:サリル・トリパシー 2001年6月号
カテゴリ: 国際

王族射殺事件に端を発する政情不安の背後に「中国vs.インド」の影 ふたつの巨岩の間のジャガイモ――ネパールのマヘンドラ元国王はかつて、自国の立場をこう表現した。中国とインドという二つの核保有国に挟まれたネパールは、大国の狭間で微妙なバランスを取らなくてはならない。ことによると冷戦時代のフィンランドよりも厳しい立場かもしれない。 ネパールの人口の九〇%はヒンズー教徒で、インドの多数派と同じ。かといってインドとの関係がいいわけではない。一方、ネパール人の五%は仏教徒で、チベットの宗教と同じであるうえ、チベットと地続きのために、ネパールと中国の関係も微妙なものとなっている。ネパールはそうした状況で、難しい舵取りを余儀なくされてきた。しかも近年、同国の戦略的重要性は急速に高まっている。それゆえに、ビレンドラ国王一族の射殺事件が起きて以来、不穏な状況が続くネパール情勢は、単にネパール一国の問題とは言えないのである。 六月一日夜、国王らが射殺され、実行犯とされるディペンドラ前国王が死亡した事件の真相はいまだ明らかになっていない。だが、事件によってネパールの政情が不安定化していることは間違いない。一九九〇年にビレンドラ元国王が議会に権限を委譲して民主化を行ない、国王が名誉的存在になっていたにもかかわらず、国王の存在は非常に大きかったからだ。

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