店が閉まる間際の買い物ほど、ドイツで勇気のいるものはない。閉店時間というのは、その時間まで客が買い物ができるという意味ではなく、店員の帰宅時間のことらしい。八時閉店なら、レジでは七時半にその日の売り上げを数え始める。この時刻に買いたいものとお金をそっと差し出すだけでも、店員は十分、不機嫌になる。ましてや、「他のサイズはありませんか?」などと厄介なことを持ち出すのはもってのほかである。「お客様は王様です」(Der Kunde ist Koenig)という、日本語と似た言い回しがドイツ語にもあるはずなのだが、実践に移されている気配はほとんどない。
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