饗宴外交の舞台裏 (45)

皇室外交を側面支援したアイルランド大使の離日

執筆者:西川恵 2001年9月号
エリア: ヨーロッパ

「最もエネルギッシュに活動する駐日大使の一人」(外務省幹部)だったアイルランドのデクラン・オドノバン駐日大使(五二)が、十月初め、六年間の任期を終えて離任する。 来日までの十二年間、本国ダブリンの外務省と英国領のベルファストで、北アイルランド和平という生々しい問題に携わってきた大使は、日本では一転して文化交流と相互理解という地味だが大きなテーマに取り組んできた。なかでも在任中の大きな仕事は、紀宮さまの公式訪問だった。 日本の皇室とアイルランドは目立たないが、親密な関係を保持してきた。天皇、皇后はまだ皇太子、皇太子妃だった八五年にアイルランドを公式訪問され、このときヨーロッパの片隅にあるこの小国の美しい風土と素朴な人々に深い感銘を受けられた。特に美智子妃はアイルランドの音楽と文学に造詣が深く、この旅行の後、高校生だった紀宮さまにアイルランドの話をいろいろされたという。

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執筆者プロフィール
西川恵(にしかわめぐみ) 毎日新聞客員編集委員。日本交通文化協会常任理事。1947年長崎県生れ。テヘラン、パリ、ローマの各支局長、外信部長、専門編集委員を経て、2014年から客員編集委員。2009年、フランス国家功労勲章シュヴァリエ受章。著書に『皇室はなぜ世界で尊敬されるのか』(新潮新書)、『エリゼ宮の食卓』(新潮社、サントリー学芸賞)、『ワインと外交』(新潮新書)、『饗宴外交 ワインと料理で世界はまわる』(世界文化社)、『知られざる皇室外交』(角川書店)、『国際政治のゼロ年代』(毎日新聞社)、訳書に『超大国アメリカの文化力』(岩波書店、共訳)などがある。
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